死刑執行ウルトラクイズ おだぶつTV     「評価 D」

KSIK放送局の人気番組、「LIVE OR DIE」。チャック・トーダンの司会によるクイズ番組であり、参加するのはモノホンの死刑囚たち。与えられたクイズやゲームなどの課題をクリアできれば大金を獲得できるけれど、失敗したらその場で死刑執行という内容だ。この過激さが人気の秘訣なわけだが、当然善良な一般市民からは非難が絶えない。おまけに近頃はマフィアのボスを番組で処刑したものだから、その筋の人たちが毎日のようにチャックを襲撃してくるように。これだけならまだ良かったが、やがてマフィアの矛先は、討論番組で彼と意見を戦わせた市民団体のグロリアにまで伸びるようになり、いよいよもってチャックも番組の降板を考えるようになった。そんなある日、マフィアに雇われた自称世界一の殺し屋ルイジが、年老いた母親を伴いテレビ局に押しかけてきた。ルイジはチャックに銃口を向け、2つの要求を突きつける。今後マフィア関係者を番組で処刑しないこと。そして母親を同局の視聴者参加番組「大儲けショー」に出場させることだ。チャックはその要求を呑み、ルイジの母親を「大儲けショー」の参加者集合場所に案内させる。だがこの母親、収録前にトイレに行こうとしたのがまずかった。縞模様のシャツを着て廊下を歩いていたものだから死刑囚と勘違いされ、「LIVE OR DIE」のスタジオに連れて行かれる。結果、ガソリンを持たされた状態で火の輪をくぐり、壮絶な爆死を遂げてしまった。この段になってチャックはルイジの母親が「LIVE OR DIE」に出たと知るが、時既に遅し。これがルイジに知れたら命が危ない。そこで先手必勝と、局内にいたルイジの不意をついて気絶させ、無理矢理「LIVE OR DIE」に参加させることにした。密閉された箱に閉じ込め、徐々に空気が抜かれる中、文字ブロックを組み合わせて「生きたい」と作ればクリア──というゲームだ。ルイジは必死にブロックを積み上げるが、完成間際になってチャックが箱を蹴ってブロックを崩し、敢え無く息絶えた。これで殺される心配もない、とホクホク顔のチャックは、降板する前の最後の収録に入る。ところが程なくして、死体置き場のルイジが息を吹き返したから大変だ。彼は銃を持って収録中のスタジオに乱入すると、チャックとグロリアを密閉した箱に閉じ込め、空気を抜き始めた…。

「尻怪獣アスラ」のマーク・ピロー監督が87年に制作したブラックコメディ。冒頭のギロチンクイズは大いに笑ったが、その後は盛り上がりに欠ける低調な展開が続き、どうも楽しむことができなかった。冒頭以外が不発だった何よりもの要因は、正当性の不在である。ギロチンクイズでは参加している死刑囚の家族が観客席にいて、「やっと家族の役に立ってくれる」と大はしゃぎ。たとえクイズに正解できなくても、「ギロチンで切り落とされた首が仰向けになっていたら家族に賞金がもらえる」という特別ルールが与えられると、家族はこれから死ぬ人間に対して「パパしっかり!」と声援を送る。この無闇に殺戮するだけではない、「家族は同意している」という微妙にずれた正当性がシュールな笑いを生み出していたのに、以降のクイズやゲームにはこのようなやりとりが無いどころか、囚人が殺されて嘆き悲しむ家族が出る始末。ただ人間が死んでいく様を笑う、不謹慎なだけの内容に堕してしまったのだ。これではギロチンクイズ以上の面白さを出せるはずが無い。でもこの映画、クライマックスで思わぬ伏線が活かされたのには驚かされた。


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