神父、警官、作曲家、有閑マダム、デザイナー、テニス選手、ダンサー、仮釈放中の犯罪者、ラッパー。職業も年齢もバラバラな9人の男女が、何者かによって拉致された。目を覚ますと、そこは洋館のような施設の中。窓やドアは厳重に封鎖され、自力での脱出は不可能だ。とそこに、誘拐した張本人と思しき人物からのアナウンスが入る。何でもこれは人間性を試すテストで、ここでみんなが殺し合いをして、最後に生き残った1人だけに、賞金500万ドルと、脱出する権利が与えられるらしい。9人はそんな現実離れした状況が受け容れられるはずもなく、ひとまず平和に暮らしながら、脱出する手立てを考えることにした。しかし密室内での生活は、彼らに予想外のストレスをもたらした。更に部屋の温度は上げられ、食事と一緒に大量の酒が振る舞われ、彼らの理性に少しずつヒビが入っていく。そしてある時、事件が起こった。作曲家とラッパーが揉み合っているところに、止めに入った有閑マダムが突き飛ばされ、手すりに頭をぶつけて死亡したのだ。これが発端となって、彼らの理性は堰を切ったように瓦解した。次々と巻き起きる、凄惨な殺し合い。そして最後に残った1人は、あまりにも残酷な事実に直面する…。
「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」のスティーヴン・R・モンロー監督による密室サスペンス。「SAW」のフォロワーであるが、あらゆる点で凡庸の域を出ず、ひどく退屈な内容だった。
最大の問題点として、9人の描写があまりに薄い。9人全員について、序盤で自己紹介した以上のことが語られず、誰一人として感情移入ができないようになっていた。誰が生き残るのか分からないよう、敢えてそうしたのかもしれない。だが人物描写を省いた結果、前半の生活シーンは得体の知れない人物の動態をダラダラ眺めるだけと化しているし、後半の殺し合いは誰が窮地に陥ろうと感情的に盛り上がれない。先が読めないメリットよりも、圧倒的にデメリットが大きいように感じられた。これでせめて戦闘描写に工夫が凝らしてあればゲーム的な面白さが加味されていたのだろうが、本作はその演出も平坦ときたからしょうがない。同じく「SAW」フォロワーで9人が監禁される「9INE」に比べても、大きく見劣りする出来だ。
しかしこの映画、ラストのオチは笑った。確かに冒頭のアナウンスでは、何人で殺し合うのかは明言していなかった。