空の大怪獣Q               「評価 B」

高層ビルの建ち並ぶマンハッタンで、常識では考えられない怪事件が相次いだ。ビルの窓を拭いていた男が、何者かに首を奪われる。ホテルの一室で全身の皮を剥がされた死体が発見される。ビルの屋上で日光浴をしていた女性が姿を消し、直後マンハッタンに血の雨が降り注ぐ…。刑事シェパードはこれらの事件の謎を追っていたところ、博物館で1つの手がかりに行き当たる。かつてアステカの民は巨大な翼蛇ケツァルコアトルを神として崇めていた。そして神に力を捧げる儀式として、人間の全身の皮を剥いでいたというのだ。もしかしたら、何者かが儀式を行い、ケツァルコアトルを現代に蘇らせたのかもしれない──とシェパードは推理した。するとその後も、高層ビルの人間を狙った事件が相次いで発生。「巨大な鳥のような何かを見た」という目撃証言も多数出てきて、いよいよ彼の考えは真実味を帯びてきた。だがケツァルコアトルが実際にいるとしたら、何処かに巣があるはずだ。巣の位置を特定できなければ、その存在を証明できないし、対策に出ることもできない。シェパードが壁にぶつかっていると、思わぬところから救いの手が差し伸べられた。宝石強盗の一味として警察署に拘留されていたクインが、警官から身を隠すためにある高層ビルに侵入した時に、巨大な卵が並ぶ鳥の巣を見つけたというのだ。「無罪放免と100万ドルの謝礼を非課税で」というクインの要求を呑み、シェパードらは巣の位置を教えてもらい、警官隊を率いて高層ビルに突入する。その頃、儀式を行った博物館の職員も別の警官により発見され、事件はいよいよ佳境に迫っていた…。

Qことケツァルコアトルが高層ビル街を恐怖に陥れる、「悪魔の赤ちゃん」と並ぶラリー・コーエン監督の代表作。怪物が画面に殆ど出てこない低予算映画であるが、ビル街を上空から見下ろすカットや、ビルの壁面にケツァルコアトルの影が大写しになるカットなど、姿を見せずとも怪物の存在を示す演出が随所に盛り込まれ、期待感を煽る。そして肝心の出現シーンでは、上空から襲い来るケツァルコアトルがストップモーション撮影とは思えないほどの滑らかな動きで表現され、短時間ながら強烈なインパクトを残す。少ない予算を有効に活用して怪獣映画の醍醐味を生み出しており、その巧妙さには恐れ入るばかりだ。
一方でやっぱりラリー・コーエン作品なので、脚本の出来はあまり宜しくない。シェパードの推理があまりにも飛躍しすぎているし、儀式を行った犯人とケツァルコアトルが完全に別行動をとっており、途中から話の興味が二分してしまっているのも厳しい。しかし小悪党クインの顛末には、「ザ・スタッフ」に通じるとぼけた味わいがあった。


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