サイレント・ワールド2012                 「評価 D」

2012年。気象学者のビルは、ニューヨークの大学にいく娘ジュリアを空港まで見送った。しかしその直後、同僚からアイスランドのヘクラ火山が大噴火したとの報が入る。火山を覆っていた氷河は決壊し、エアーズロックほどの巨大な氷塊となって海流に乗って移動を開始。このままでは19時間以内に北米大陸に到達し、ニューヨークを始めとする各都市が壊滅的な被害をこうむることが明らかになった。ビルは慌ててジュリアを迎えにいこうとしたが、航空機は全便欠航。仕方ないので、妻や息子と共に車に乗って、ニューヨークを目指すことにした。一方のジュリアは恋人のローガンと共に、政府が発表した緊急事態に愕然としていた。氷塊が接近するにつれてニューヨークの温度は急激に下降。軍が氷塊を破壊しようとミサイルでも撃ち込もうものなら、岩ほどもある破片が上空に散らばり、本土に降り注いでくる。このような中で何とか生き延びるべく、2人はニューヨーク中心地からの脱出を図ることにした…。

氷に閉ざされたニューヨークから家族を救い出すという「デイ・アフター・トゥモロー」テイストな氷点下パニック映画。そもそも最初に「サイレント・ワールド」という邦題がついた作品が「デイ・アフター・トゥモロー」のフォロワーだったわけで、配給元のプライムウェーブとしては原点に戻ったようなものだろうか。
そんな本作の特徴は、氷そのものを中心とした災害描写がなされている点だ。超低温による人体の凍結やら、急激な気温変化に伴う竜巻の発生なんかも盛り込まれているが、これらは添え物的扱い。あんな巨大な氷河が崩落したなら氷塊よりも先に大津波が来そうなものだが、そんな様子はない。あくまで災害の主役は氷であり、連山のような巨大氷塊が押し寄せて都市を文字通り潰していく様や、氷の欠片が空から無数に降ってきて家々を破壊していく様を、徹底的にダイナミックに描いていた。映像技術的には稚拙さが目立つものの、氷塊が落下してくる映像のインパクトはなかなかのものだった。
しかしこの映画、人間側のストーリーのご都合主義具合が鼻についてしまった。とにかく本作のビルたちは困難に直面しない。ガソリンがなくなれば偶然別の車が見つかり、道が塞がれていれば爆弾の材料が偶然周りに転がっていて、陸路で行くのが難しくなれば偶然セスナ機を所有する家に辿り着く。災害時に生き永らえるパニック映画の主人公である以上、ある程度のご都合主義は避けられないものだが、それにしても本作の場合はひどすぎて笑えてくるレベル。おかげで緊迫感もへったくれもなく、作品の盛り上がりを大きく欠いていたのは厳しいところだ。


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