1995年、アフガニスタンの砂漠地帯。オーストラリア軍の諜報部に属するハーシュとフランチェッティは、行方不明の兵士たちを探して洞窟の中へ。その奥で彼らが見たものは、治療方法のない新種のウイルス・バクトラに感染し、血みどろになって死屍累々と化した兵士たちの姿だった。しかしそんな中で、マイケル・クロス中尉だけは、奇跡的に感染を免れていた。そして現在、シドニーの離れ小島ロックアイランドでは、ロックフェスティバルの開催準備が着々と進められていた。ゼッドとアリのカップルはチケットを買いそびれ、地下水路を通って本土から会場への侵入を図る。ところが水路を歩いていると、彼らは全身血だらけのホームレスに遭遇。2人は慌てて逃げ出し、何とか会場に入り込む。すぐにスタッフに見つかったが、運営を手伝うことで見逃してもらい、無事に翌日のロックフェスティバルの見学ができるようになった。ところが先刻のホームレス、バクトラに感染したフランチェッティの成れの果てだった。フランチェッティに腕を掴まれていたゼッドはバクトラに感染。一晩としないうちに症状が現れ、嘔吐を繰り返し、周りの人間にウイルスを撒き散らしていった。そしてロックフェスティバル当日、会場内の盛り上がりが最高潮になる傍らで、感染者は見る見るうちに増えていき、救護室には次から次へと無惨な有様の患者たちが運び込まれてきた。事態を把握した州政府の医療顧問のジムは、ハーシュたち政府軍と協力してロックアイランドを封鎖。ウイルスの正体がバクトラであることが明らかになると、ハーシュはこの事件が、軍を退役したマイケルによるバイオテロに違いないと確信する。95年の事件以来、マイケルはバクトラの研究に没頭し、製薬会社にも姿を現していたというのだ。かくしてジムとハーシュは感染者たちの命を救うため、マイケルを捜索することに。ところがこの事件の裏には、政府の巨大な陰謀が蠢いていた…。
政府の陰謀を絡めた水不足映画「シティ・オン・ファイアー」のトニー・ティルス監督による、これまた政府の陰謀絡みのウイルスパニック。後味の悪いストーリーは相変わらずで、巨大な権力に抗うことのできない登場人物たちの姿は、見ていてひたすらに遣る瀬無かった。けれども一方で、「シティ・オン・ファイアー」ではニュース映像の使いまわしで済まされていた災害描写が、本作では過剰なまでに生々しく描かれていて大きな魅力となっていた。とにかく本作の感染者は、惨たらしいの一言。作中で解説される「発疹ができ、肌が勝手に裂けていき、肺や腸に血が流れ込んでくる。皮膚と肉の間に血が流れてきて、皮膚がはがれる」という恐ろしい症状を何の衒いもなく表現しており、ベッドの上を跳ね回りながら黒い血を吐き散らす患者の姿ときたら、もう目を覆わんばかりだ。そして更に凄まじいのが、ロックフェスティバル開催中に嘔吐しまくる感染者たちの光景だ。この映画のゲロを吐くカットの多さときたら近年稀に見るぐらいで、酷い場面では「ステージ上のバンド→盛り上がる観客たち→感染者が嘔吐→バンド→観客→嘔吐→バンド→観客→嘔吐→…」と完全にゲロを中心としたローテーションが組まれており、まさに悪夢。感染者たちのインパクトが抜群なあまり、ジムたちが真実に行き着く終盤が非常に平坦に感じられるのは難点と言える。だが災害描写のケレン味がついた分、「シティ・オン・ファイアー」よりは確実に楽しめる作品だった。