政府機関の遺伝子研究所で働くジーノは、爬虫類と猿のハイブリッド生物の開発に取り組む一方、恋人レイチェルとの結婚を間近に控えていた。ところが彼は、無精子症であることが発覚する。これでは子どもを残せない、とレイチェルは彼のもとを離れていった。惨めな思いになったジーノは、自分の遺伝子を残す手段を模索し、爬虫類の卵子に猿ではなく、自分の遺伝子を注入してみた。すると、これがドンピシャリ。爬虫類が産んだ卵には人間の遺伝子が交じり合っており、脅威のハイブリッド生物・蜥蜴男が誕生したのだ。ジーノは政府機関の目から卵を隠すと、誕生した蜥蜴男にカルロと名づけ、人目につかないように大切に育て上げた。そして3年後、すっかり成年男子の体格になったカルロは、出会い系サイトに手を出したり、カンフー映画の真似事をしたり、水パイプでマリファナを吸ってラリラリになったりと、駄目青年そのものではあるが楽しい日々を過ごしていた。しかしある日、彼はジーノの家にいるところを、麻薬ディーラーの男に目撃されてしまう。カルロは興奮してディーラーに襲い掛かると、無惨にも食い殺し、証拠隠滅を図った。更にカルロは家から脱走し、近所の住民や政府機関のエージェントたちを次々と惨殺。ジーノはカルロを止めるため奔走するが、その過程で彼は、カルロが自己のアイデンティティで苦悩していたことを知る…。
爬虫類の遺伝子を介して展開する、父と子のドラマ。蜥蜴男のカルロは、ぴんと上を向いた長い尻尾がトレードマーク。人間を襲う際には、鋭い牙で噛み付くのみならず、テレビで学んだカンフー殺法で相手を翻弄し、ジャンピング後ろ回し尻尾ビンタで強烈な一撃を食らわせるという、人間と爬虫類の両方の特質を活用した戦い方を見せており、なかなか味わい深いものがあった。カルロが殺人に走る理由はありきたりではあるが、父ジーノが事件を「人間の味を覚えた蜥蜴男の暴走」と見なし、心の底でカルロを怪物と認識していた描写を置くことで、真相発覚の悲劇性を増していたのは好印象だ。
ただ主役の蜥蜴男のキャラこそ良かったが、モンスター映画として見ると演出の外し具合が気になった。映画のトーンを重くしないためか、全体的にコメディ調で統一されており、たとえカルロの真意が明らかになった後でもそれが変わることはない。おかげで残虐シーンにおける悲哀や猟奇性が幾らか薄まっていて、どうも中途半端な感じだった。