怪獣ゴルゴ             「評価 A」

サルベージで一攫千金を狙うサムたちは、アイルランドのナラ島沖で沈没船の探索を行っていた。だが突如、海底火山が噴火した。押し寄せる高波に船は損傷。サムたちはナラ島の港に停泊し、船を修理しようとした。ところが港に来てみると、島の人間は妙によそよそしかった。それもそのはず、彼らは財宝が眠るポイントを把握しており、それを余所者に知られるわけにはいかなかったのだ。港の責任者から直ちに出港するように告げられ、サムたちは止むを得ず港を後にしようとした。しかしその時、彼らは海面に漂う、瀕死のダイバーを発見する。どうやら海底で恐ろしいものを見たらしく、たちまちショック死してしまった。これは何かある、と睨んだサムたちが海底に潜ってみると、見たこともないような巨大な爬虫類が海底を移動していた。太古に棲息していた巨大怪獣が、火山噴火の影響で現代に蘇ったのである。その日の晩、怪獣は港に上陸し、人々を混乱に陥れた。怪獣はすぐに海に戻っていったが、またいつ島に現れるかもしれない。そこでサムたちは港の人間に、怪獣を捕獲することを申し出た。海底にネットを張り巡らし、見事怪獣の捕獲に成功。そのニュースは全世界を駆け巡り、アイルランドの学会からは怪獣を引き取りたいとのオファーがかかった。しかしサーカスに売ったほうが金になるということで、怪獣はロンドンのサーカス団に売り渡されることになった。怪獣はゴルゴと名づけられ、サーカスの大きな目玉に。サムたちは大金を手にし、これで全てがうまくいくはずだった。ところがそんな時、ナラ島が何者かによって壊滅したとの報が入ってきた。実はナラ島で発見されたゴルゴはまだ子どもで、同じ海域にはそれよりも遥かに体躯を誇る大巨獣、ゴルゴママがいたのだ。ゴルゴママはナラ島を蹂躙すると、我が子の匂いを追って、ロンドンめざして全速前進。NATOの駆逐艦をことごとく押しのけ、ロンドンに上陸し、歴史ある街並みを縦横無尽に破壊していった。対するイギリス軍は、ゴルゴが通電に弱いことを突き止めると、高圧電線を張り巡らせた広場にゴルゴママを誘い込み、感電死させる作戦に出るが…。

「原子怪獣現わる」のユージン・ローリー監督による、イギリス版「ゴジラ」といった趣の着ぐるみ怪獣映画。主役のゴルゴおよびゴルゴママは、大まかなシルエットこそゴジラに近いものの、あまり凶悪な外見にしては観客が感情移入しづらいと考えたのか、頭と両手が異様にでかくて何処となくユーモラスな感じだ。ゴジラの放射能火炎みたいな特殊能力は一切持ち合わせず、破壊シーンはひたすら街を練り歩くだけなのだが、本作はその破壊描写への入れ込み具合が尋常でないくらいに凄まじかった。海中から現れて駆逐艦を沈める場面、タワーブリッジやビッグベンをなぎ倒す場面、そしてクライマックスの高圧電線との格闘。いずれも着ぐるみのゴルゴママが巨大なミニチュアを破壊していく様をスローで映し出しており、重量感に溢れていて迫力満点。画面を埋め尽くさんばかりの大量のエキストラたちがロンドンの街中を逃げ惑い、次々と崩れゆく建物の下敷きになっていく様子も、まさに怪獣映画の醍醐味といった具合で楽しさ抜群だ。またカラー映画であることを活用し、ロンドン襲撃シーンでは街中至るところから真っ赤な煙が立ち込め、被害の甚大さを強調していたのも見逃せないところ。
ただし本作、人間側のドラマは物凄く希薄である。ゴルゴママが出現してからは、それが一段と顕著になり、それまで主人公然としていたサムたちが逃げ惑う群集に埋没し、完全に「その他大勢」の扱いに変わり果てる。特に終始ゴルゴを気遣っていた少年が、ろくにゴルゴに絡まず終了したのは何とも勿体無い限り。破壊シーンだけでも十分すぎるほど満足でき、名作であることは間違いないのだが、大傑作と呼ぶにはあと一歩及ばない印象だった。


TOP PAGE