TATSUMAKI          「評価 C」

ワシントンに赤い雨と赤い稲妻が降り注ぎ、議会議事堂が半壊する事件が起こった。この事態を目の当たりにした警官デヴィッドと弟ジェイコブは、失踪中の父親マーカス・グランジ博士の仕業に違いないと確信する。かつてマーカスは国からの支援により、人工的に気象災害を起こす兵器を開発するサンダーヘッド計画に取り組んでいた。ところが1999年、上院議員オルドリッチの提言により計画は打ち切られ、マーカスは姿を眩ませた。そして今、彼は完成させた気象兵器を携え、オルドリッチへの復讐に舞い戻ってきたのだ。ペンタゴンが、ワシントン記念塔が、気象兵器が起こす落雷や竜巻によって相次いで破壊されていく。デヴィッドとジェイコブは、当時マーカスの助手をしていたサマンサと協力して、マーカスの捜索に乗り出すことにした…。

「ザ・スネーク」のトドール・チャプカノフ監督による気象パニック映画。「TATSUMAKI」なんて邦題ではあるが、竜巻以外にも雨に雷に雹と多種多様な気象災害が出てきており、どちらかと言うと雷の方が目立っている印象だった。冒頭の議会議事堂の破壊に始まり、ペンタゴンを火の海にしたり、小さい人工雲が周辺に放電することでピンポイントに標的を攻撃したりと、原理はともかくとして派手な見所が満載。一方で竜巻も、ワシントン記念塔をへし折ってリンカーン記念館まで吹っ飛ばしたり、原発を無惨に破壊したりと、数は少ないが豪快な見せ場で作品に花を添えていた。
しかし本作、災害シーンの出来自体は悪くないのだが、後半になると主人公たちが研究施設に篭りっきりになるのはいただけなかった。こうなったら外に出て災害を体験することがなくなり、作品の緊迫感が大いに削がれてしまった。本作の製作者たちも一応そのことは危惧していたようで、ジェイコブがマーカスに会うために研究施設を飛び出す他、TVレポーターが最前線で災害を取材し、主人公たちが施設にいる間も外の場面を極力盛り込もうとしている。しかしジェイコブは事態が一段落するまで災害に遭遇しないし、ろくな描写もないTVレポーターでは災害の当事者としては役者不足。不満を払拭できているとは言い難かった。
余談だが、本作のDVDの解説文にはびっくりした。「赤い雨や赤い稲妻など奇怪な気象現象が起こり、ホワイトハウスを竜巻が襲い、半壊する被害を受ける」と書いてあるが、最初の災害シーンに竜巻はなかったし、そもそも破壊されたのはホワイトハウスじゃなくて議会議事堂だぞ。もしかしてこれを書いた人、ホワイトハウスと見分けがつかなかったのだろうか。疑念は尽きない。


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