少年アレハンドロはガールフレンドとドライブ中、人をはね飛ばして死なせてしまった。でも大丈夫、アレハンドロは富裕層の息子だから。父親が大金を払ってくれたおかげで、刑務所行きはパス。山奥の矯正施設で数ヶ月農作業に携わるだけで、また自由にドライブに行けるようになったんだ。ところがこの施設の教官たちときたら、アラセリを筆頭にとんだサディスト揃い。言うことを聞かないと狭いケージに入れられるし、食事も満足に与えないし、水責めみたいな拷問までやっちゃうんだ。ひどい場所だね。せっかく刑を免れたのに、これじゃ刑務所の方がまだマシだよ。だからアレハンドロたちは協力して、施設を脱走することにしたんだ。すぐ教官たちが犬を連れて追いかけてきたけど、教官が3人なのに対して、こっちは4人。バラバラに逃げてしまえば、こっちのものさ。誰かが逃げのびて、施設のことを公表すれば、もう教官なんか怖くないね。教官は大人だから裁かれて、アレハンドロたちは哀れな少年少女として自由の身。また思う存分に犯罪ができるぞ。やったね、アレハンドロ!
ニューセレクト発の「小屋」シリーズ第3弾は、実際に起こった事件を基にしたという、スペイン版「スパルタの海」だ。冒頭、少年少女に過酷な虐待を加える矯正施設を問題視するテロップが出てきて、「ああ、謂れのない罪で施設に入れられた少年が苦しめられる様子を写して問題提起するんだな」なんて思っていたら、主人公アレハンドロが同情の余地もないクズ野郎として描写されてびっくり仰天。ドライブ中に彼女にチンコを咥えてもらって、気が緩んだ隙に人を轢死させただけでも十分に憎たらしいのに、家に帰って親に泣きつくわ、これっぽっちも反省しないわで、非常に胸糞が悪くなってくる。そんな彼は矯正施設で様々な虐待を受けるのだが、それによって人間性が改められることは全然なく、自らの命惜しさに仲間と共に脱走。バラバラに逃げた少年たちを看守たちが別個に追っていく、まんま「カプリコン・1」なクライマックスを経て、自由を勝ち得たアレハンドロたちが再び犯罪を起こすという、実に救いようのない結末を迎えてしまう。製作側は「暴力的な矯正施設はクズを更正させませんよ」と言いたいのだろうが、ここまで主人公たちが性根から腐っていると、たとえ真っ当なお勤めを果たしたところで結果は変わらない気がする。ちゃんと問題提起ができているのか首を傾げたくなる、あまりにもやるせない作品だった。