コロラド川流域にあたる湖で地震が発生。底の地面が割れ、太古より眠りし恐るべき怪物が目を覚ました。さてそんなことはいざ知らず、アメリカ南西部のヴィクトリア湖は春休みの真っ盛り。水着姿の学生たちが大挙して湖に押し寄せ、乱痴気騒ぎの大賑わいとなっていた。そんな中、イケてない高校生ジェイクと幼馴染のケリーは、映画監督デリックに気に入られ、セクシービデオ撮影クルージングの手伝いをさせられることになった。ジェイクたちはあまりにも下品なデリックの言動にウンザリしながらも、プレイガールたちの痴態をカメラに収めていく。だがクルーザーがコロラド川に浮かぶ小島に近づいたとき、ジェイクは驚くべきものを目にする。家で大人しくしてるはずの弟と妹が、助けを求めているではないか。2人は家を抜け出し、ボートに乗って島まで来たはいいものの、ボートが流されて帰れなくなっていたのだ。ジェイクはデリックに懇願し、船を島に寄せてもらい、2人を助け出した。しかし島に近づきすぎたせいで、スクリューが藻に絡まってしまう。何とか藻をどけて発進したら、今度は岩場に乗り上げ、船底に穴が開いてしまった。これでは最早撮影どころではない。落胆する一同だったが、本当の災難はここからだった。200万年前に絶滅したはずの古代ピラニア、パイゴセントラス。地震によって現代に蘇ったそいつらが、大挙してクルーザーに群がってきたのだ…。
「ハイテンション」のアレクサンドル・アジャ監督による、「ピラニア」のリメイク作。95年のリメイク作「ザ・ピラニア 殺戮生命体」が原典とほぼ同じ筋書きだったのに対し、本作は殆どオリジナルと言ってもいいぐらいに大胆な脚色がされていた。もはや大戦も冷戦も時代遅れなので、ピラニアが人工的に誕生したものではなくなり、地中で眠り続けていた古代種が現代に蘇るという「メガロドン」みたいな出生に。ピラニアによる事件を追う役割は主人公の母親である保安官に託され、主人公はクライマックス直前まで事件に関わらず、「ザ・ピラニア 殺戮変異体」に出てきたようなエセ映画監督と取り巻きのプレイガールたちと一緒に、呑気にクルージングをしている。そしてピラニアの退治方法も、廃液によるものでは無くなっていた。原典と同じ部分といえば、ピラニアたちが川を下りながら行く先々で事件を起こす点と、後半でビーチが地獄絵図に陥る点、一番盛り上がるビーチの場面とは無関係の場所でクライマックスが展開される点、そしてラストが煮え切らない点ぐらいだ。だが他はともかくとして、ラストが半端なところだけは原典を踏襲して欲しくなかった。続編を想定しているとは言え、本作はピラニア騒動に一段落すらついてない状態で終了し、その物足りなさは「ピラニア」を遥かにしのいでいる。このラストのせいで、大きく評価を落としていると言っても過言ではなかった。
そんな本作の見所は、何と言ってもピラニア襲撃シーンにおけるゴア描写の数々だ。鋭い牙で体がえぐられるのは当たり前。目玉を食いちぎられ、ペニスを奪われ、両足が骨に変えられ──といった凄惨な様子が、リアルなメイクと美麗なVFXで執拗に描かれていて見応え抜群。またピラニアによる被害のほかにも、千切れたワイヤーに体を切断される、ボートとボートの間に頭を押しつぶされる、髪が絡まった状態でスクリューが動き出して頭の皮がずる向ける、といったドサクサ紛れの惨たらしい人災も数多く発生し、ゴアシーンにバリエーションを持たせていたのも好印象だ。スクリューをチェーンソー代わりに振り回してのピラニア大虐殺も圧巻で、たとえストーリーに満足できなくても十分すぎるほどに楽しむことができた。