超強台風 「評価 B」
グアムで発生した台風“藍鯨”が、勢力を強めながら北上。浙江省の温州市に上陸する可能性が出てきた。そこで市長は元恩師の気象学者チェンの助言のもと、住民を避難させることを決断。そしていよいよ、台風が上陸した。住民の避難は完了している、と市長が安堵していると、漁師たちが船を守るため、港から引き上げようとしないとの情報が。早速市長は港に単身直行し、漁師たちに「頼むから避難してくれ」と膝をついて懇願。彼らを近くの倉庫に避難させることに成功した。だがその矢先、ある中年男性が市長に訴えた。彼の妻は離島にいて、出産がうまくいかず危険な状態なのだそうだ。そこで市長は軍に連絡し、台風の目が来たときにヘリを飛ばし、島に救援を出すよう要請。男は泣いて喜んだ。とその時、1人のオヤジが横転したタンクローリーに挟まれて身動きがとれなくなっているのを目撃。市長は漁師たちと協力し、見事にオヤジを救出した。倉庫に戻った彼らに、更なる災難が襲い掛かる。高波で洪水になった倉庫に、サメが侵入してきたのだ。市長は元特殊部隊の経験を活かしてサメと格闘し、無事撃退。数々の困難を乗り越えたとき、空は晴れた。台風の目に入ったのだ。速やかにヘリが出動し、中年男性の奥さんを救出すべく、離島へと向かった。これで万事解決と思いきや、ダムの水が溢れ、決壊しそうになっているらしいことが発覚。最悪の事態を免れるには、市長が前々から計画していた新興開発地域に放水するしかない。自らの悲願も、市民の命には替えられない。市長は即座に、放水を指示した…。
巨大台風と市長がガチンコバトルを繰り広げる、新感覚すぎる内容のパニック映画。とにかく市長の勇ましいこと限りなく、次から次から発生するトラブルを、さしたる熟考もせずに強烈なリーダーシップと行動力、そして軍隊上がりの戦闘力でスピーディーに解決していく姿は、面白すぎてしょうがなかった。「市民はみんな家族だ!」と言い切り、たとえ軽はずみな行動をとる者であろうと、それが市民であれば自らの命をかけて守り通そうとする。災害対策本部を放ったらかしにして救助活動を行うのはリーダーとしてどうかと思うが、きっとこれも部下を強く信頼しているからなんだろう。うん、多分。市長がそんな超人的なキャラだからこそ、彼を捉える演出はまるでヒーロー映画そのものだ。タンクローリーに挟まれたオヤジに駆けつける場面では、豪雨の中全速力で走ってくる様子をスローモーションで写し、壮大なBGMが流れる。こんな演出でやってくるのが見た目が平凡なオッサンなものだから、感動と笑いの入り混じった非常にシュールな光景と化していた。
そして本作を語る上で忘れてはならないのが、特撮だ。台風が町を襲う映像は、「中国大地震」「驚天動地」のように精巧なミニチュア撮影で作られている。しかし災害シーンが短い地震映画と違い、本作は台風映画だ。そのため後半はミニチュア特撮が出ずっぱりとなるわけで、映像を何度も眼にすることで、余計にミニチュアらしさが鼻についてしまった。どう見てもミニカーな車が水に浮かんで横に流されていく…なんて「ターボクラッシュ」級の映像まで出てきた日には、もう笑いが止まらない。また模型のサメは全身硬直したまま水中を突き進み、果敢に動き回り応戦する市長と、見事なコントラストを生み出していた。
本作にも「中国大地震」「驚天動地」と同じく、人民解放軍が出てくると感動的なBGMが流れて市民たちが歓喜するという、解放軍万歳な場面はある。でもそんな箇所はほんのツマミ程度にしか存在しないので、市長の活躍と台風特撮に純粋に大笑いすることができた。素晴らしいまでの娯楽作である。
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