驚天動地 「評価 D」
2008年5月12日、四川省でマグニチュード8の大地震が発生した。ただちに中国共産党は解放軍の派遣を決定するが、被災地へ行くための橋は崩落していた。また空には厚い雲がかかり、空からの救援も難しかった。このような状況下で、偶然付近で演習をしていたタン率いる自動車化歩兵旅団は、上からの命令を待たずに被災地に赴き、救援活動を開始した。やがて徒歩でやってきた解放軍、そして世界各国からのボランティアも合流し、多くの人民の命が救われた。だがそんな時、近くの化学工場から有毒ガスが漏れていることが発覚。更に工場で火災が発生し、もし硫黄タンクに引火したら大量の有毒ガスが溢れ、大勢の死者が出ることが明らかになった。そこでタンは一刻も早く火を止めるべく、工場近くに堆積していたリン酸石膏の廃棄物を爆破し、工場全体を土砂で埋める作戦を立てた…。
四川省で発生した巨大地震。唐山地震を「中国大地震」として映画化した中国共産党がこれに目をつけないわけがなく、さっそく人民解放軍の主導のもと、本作が制作された。「中国大地震」に比べると、余計なメロドラマを挿入せず、人命救助する解放軍のみにスポットライトを当てているので、遥かに内容が普遍的で見やすいものとなっていた。冒頭の大地震もミニチュア撮影がスケールアップしており、山々が揺れ動き、バスが土砂に飲まれ、小学校が崩落し──といった惨劇が余すところ無く描写されていて見応え十分だ。でも本作、いくら「中国大地震」より優れているとは言え、やっぱり共産党の宣伝映画である。救助活動の合間合間に、解放軍の優しさを異常なまでに強調する場面が差し込まれ、そのたびに違和感に苛まれた。例えば、解放軍が瓦礫に埋まった児童を救出するため、教師の遺体を切断するべきか迷う場面。「遺体を傷つけるなんて」という声に対し、同僚の女教師が「きっとこの教師は児童が助かるのを望んでいるはず」と、解放軍に遺体を切断して欲しいと懇願する。すると周辺で作業をしていた何百人もの兵士が突然手を休め、一斉に教師の遺体に注目して敬礼をするのだ。なんて慈愛に満ちた解放軍だろう。また誕生日を迎えるはずだった女子児童が瓦礫から救出され、生死の境をさまよっている場面では、やはり何百人もの兵士たちが彼女を励ますため、一斉にライトを振りながら「ハッピバースデートゥーユー」と歌いだすのだ。なんて暇な……いや、情けの深い解放軍だろう。そして映画のエンディングには「我が祖国の繁栄を祝おう」なんて歌が流れ、すっかり解放軍万歳共産党万歳なムードで幕を閉じる。ここまで露骨なプロパガンダが未だに作られていることに、驚愕を禁じえない内容だった。
ちなみに、本作を配給したのは「ヘルアイランド」と同じ彩プロである。だからレンタルDVDでは本編開始前に、映画の雰囲気とは似つかわしくない美容本のCMが流れ、素晴らしいまでに脱力させてくれた。
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