大洪水               「評価 A」
大寒波がもたらした雪が、春の訪れと共に融解。フンボルト川が増水して氾濫の恐れがあるので、囚人を動員して堤防の補強作業が行われた。しかしその甲斐なく、堤防は決壊。作業していた囚人たちは濁流に流され、大勢が溺れる惨事となった。そんな中、辛うじて生き永らえた囚人ドノバンは、囚人仲間のピーブルズと、負傷した警官シャーキーを救出し、半分水没した家へと避難した。家に住んでいたエリザベスは、思わぬ来客に恐れおののく。特にドノバンは殺人罪で服役していたというから、彼女の警戒心も尋常でなかった。しかし共同で生活するうちに、エリザベスはドノバンが悪人とは思えなくなってきた。打ち解けた彼女に対し、ドノバンは真実を打ち明けた。彼の仕事仲間に、マーフィーという男がいた。2人は共同で事業を立ち上げて順調にいっていたのだが、ある時マーフィーは会社の乗っ取りを画策。自らの妻ノーマを殺すと、その死体をドノバンの家に放置し、彼を殺人罪で投獄したのである。そして今、自由を得たドノバンは、マーフィーへの復讐を果たそうと燃えていた。エリザベスは復讐を思いとどまるよう説得するが、聞き入れてもらえず、ドノバンはマーフィーの会社へと単身乗り込んでいった…。
「ワンダとダイヤと優しい奴ら」のチャールズ・クライトン監督によるパニックサスペンス。1958年の映画ではあるが、洪水による破壊描写が非常に気合いの入った出来だった。冒頭の堤防決壊をはじめ、大掛かりなセットを駆使したスペクタクルシーンが何度も出ており、特に中盤の崩壊する家からの脱出シーンは煙突が倒れて壁が割れ──と段階を踏んだ壊れ方が丹念に描かれていて迫力満点。またキャストも魅力的で、MGMミュージカルのスター(そしてパニック映画ファンには「人類SOS!」でお馴染みの)ハワード・キールが復讐心に駆られるタフガイを好演しているほか、「華氏451」「1984」の名脇役俳優シリル・キューザックが、ケチな小悪党のピーブルズとして存在感を示しているのも見逃せない。終盤の対決が少々盛り上がりに欠けたのは残念だったが、今見ても色あせない魅力を秘めた作品である。
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