大洪水 「評価 C」
1953年、オランダのゼーラント州に大型低気圧が接近した。猛烈な雨により水位が上昇し、堤防が決壊。町は大洪水に陥った。その事態を聞きつけた海軍中尉のアルドは、ヘリに乗って現場へと急行し、溺れかけていた女性を救出した。しかし女性の顔を見て、アルドは驚愕する。その女性は、弟コースの、かつての恋人ユリアだった。コースとユリアは強く愛し合っていたが、ユリアが子どもを身ごもった途端、コースは彼女を捨てて逃走。以来ユリアは、父親のいない子どもを産んで育てることになり、近所の人々からは「尻軽女」と罵られる苦難の日々を過ごしていたのだ。運命のいたずらか、そんな彼女をアルドは助け出し、病院に搬送した。だが意識を取り戻したユリアが言うには、生後五週間の息子アーネストを、溺れていた場所のすぐ近くの家に置いてきてしまったらしい。そこでアルドはユリアと共に、アーネストを探しに行くことにした。ところがその家に行ってみたものの、アーネストの姿は見当たらない。誰かが保護して最寄りの避難所に連れて行っているかもしれない。そう考えて避難所に行ってみても、アーネストを保護したと名乗り出る者はいなかった。それもそのはず、事故で夫と息子を亡くしたばかりの女性が、偶然拾ったアーネストを神からの贈り物と考え、ユリアの目から隠し続けていたのだ。そうとは知らず、ユリアはただ絶望するばかりだった。時は流れて1971年、大洪水の教訓を活かした巨大堤防の完成式典が行われ、ユリアとアルド、例の女性をはじめ、当時被災した多くの人々が参列していた。そして式典が終わった直後、ユリアは目撃した。例の女性に駆け寄る、黒い髪の青年の姿を。ユリアは彼女に問い質すと、彼女は自らが犯した罪を告白していった…。
オランダで実際に起こった大洪水をモチーフにして製作された災害ドラマ。家が水没していく際のパニック感や、避難所の混乱、そしてドサクサに紛れての犯行と、こと災害についての描写は凄まじくリアルに感じられた。アルドが軍の仕事を放棄してユリア1人の世話を焼くのはどうかと思うが、生死の境に直面したことで親子の絆を取り戻していくドラマは悪くなく、見ていて心が洗われる。……と思ったら、絶望に陥ったユリアが立ち直るドラマをすっ飛ばして、いきなり1971年に移行しちゃうのには仰天した。ユリアとその息子を攫った女性の両者ともに、気持ちを整理するのに長い時間が必要だったのは分かるが、それまでのスローテンポな展開から一転、物凄いハイスピードで真相の発覚から罪の告白、そしてユリアと息子の再会と事態が進展していくのは、幾らなんでも不自然に思えた。ろくに救助活動も行わず勝手な行動をとっていたアルドが式典で表彰されているのも謎だし、どうにも腑に落ちない作品だった。
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