アイボーグ 「評価 A」
アメリカは多発するテロ事件に対抗するため、国防情報監視ネットワークを設立。国内の全ての監視カメラの映像を一括管理し、また自走式カメラロボットの“アイボーグ”を町中の至るところに置くことで、テロリストの活動をいち早く発見して事件を未然に防ぐという、画期的なシステムだった。そんなある日、アイボーグの活躍によって逮捕されたテロリストが、警察の取調室を抜け出して投身自殺を図った。監視カメラに記録されていた映像では、ガンナー捜査官が取調室のドアロックを解除したことが記録されていた。しかし当のガンナーにそんな覚えはない。不審に思ったガンナー捜査官が調べたところ、何者かがシステムを掌握し、アイボーグや監視カメラの映像を、都合のいいように作り変えていることが発覚した。いったい何故、そんなことをしているのか。ガンナーは同じくアイボーグの存在に疑問を抱いていた、大統領の甥のジャレット、TVレポーターのバーバラと協力し、真相究明に乗り出した。ところがアイボーグは武器を携行する権限を与えられており、秘密を暴こうとする者たちを、事故や自殺に見せかけて次々と暗殺していく。ジャレットがそのことを電話で大統領に相談してみたところ、大統領も同様の疑念を抱いているようで、直接会ってアイボーグについて話すことを約束した。しかしその矢先、アイボーグの仕業と思しき大統領暗殺計画が舞い込んでくる。ガンナーたちは大統領の身を守るべく、警官隊を率いて、大統領の演説会の会場に突入。だが会場内に、人の姿は無かった。でもTVの中継映像には、ちゃんと大統領が演説している様子が流れている。そう、大統領は既に存在しない人物となっていたのだ。茫然となるガンナーたちに、アイボーグの大群が襲い掛かる。全てはシステムを掌握する者の、計画実現のために…。
「パイソン」のリチャード・クラボー監督によるSFサスペンス映画。犯罪抑制のために作られたネットワークが暴走し、邪魔者の排除、記録の捏造など、やりたい放題になるという、「マイノリティ・リポート」と「イーグル・アイ」を足して2で割ってロボット要素で味つけした感じの内容だ。「イーグル・アイ」「MP3」などの万能すぎるシステムが敵に回る作品は、主人公側に反撃の余地を与えようとするあまり、システム側に関して明らかに迂闊な描写をしてしまいがちだ。そして本作の後半で発覚する大統領暗殺計画の内容は「イーグル・アイ」並に回りくどいもので、「おいおい、もっとスマートに殺害する方法はいくらでもあるだろ」と思ってしまった。しかし実はその計画自体が完全なフェイクで、真の目的はガンナーたちを偽の計画で誘き寄せた先にあった──という展開には舌を巻かされた。更にフェイクを用意したことにも理由を持たせており、リチャード・クラボー監督作とは到底思えないぐらいの(失礼)、相当しっかりしたストーリーだった。またアイボーグたちのデザインも、メインの蜘蛛タイプをはじめ、カメラに二本足がついただけの小型タイプや、人型タイプなど、実に個性豊かで眼に楽しい。個体ごとにスタンガンやライターやノコギリといった異なる武器を所有しており、それを巧みに駆使することで人間を事故に見せかけ殺害していく様からは、ガジェット的な面白さも窺えた。
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