海底1万リーグからの妖獣         「評価 D」
アメリカ西海岸の浜辺で、謎の水死事件が続発した。ボートに乗っていた人々が相次いで死体となって発見されるが、その体は海にいたにもかかわらず、火で焼かれたような有様だった。付近に打ち上げられたボートも同様に焼かれていたが、可燃物等の形跡はない。このあまりにも不可解な事件に、国防総省は頭を悩ませていた。そんな中、海洋学者のスティーブンスが浜辺を訪れ、偶然にも新たな死体を発見した。スティーブンスは放射線が海洋生物にもたらす影響を専門分野としており、現場を調べてみたところ、ボートや死体から、膨大な量の放射線が検出された。ボートや死体が焼かれていたのは、激しい放射線が原因に違いない。そう推理したスティーブンスが付近の海を潜ってみると、狙いはドンピシャリ、海底に巨大なウラン鉱床を発見した。これで事件の真相が見えてきた──と思ったのも束の間、潜水中の彼の前に、海蛇のようなトカゲのような、何とも奇妙な風貌の半魚人が出現し、猛然と襲い掛かってきた。奴こそが多くの人々を水死させてきた事件の真犯人、海底1万リーグからの妖獣だ!
ロジャー・コーマン率いるARC社が55年に公開した海洋モンスター映画。本作の半魚人は円い目玉と襟巻きのようなトサカが特徴的なユーモラスな外見をしており、寸胴体型であるが故に水中での動きはとっても緩慢。攻撃方法も水中にいる人間に抱きついて溺死させるという、恐ろしいけど憎めないやり方で、前年公開された「大アマゾンの半魚人」のスマートで残忍な半魚人とはハッキリ差別化がされていた。どっちの半魚人が造形的に優れているかは一目瞭然だが、本作のとぼけた半魚人にも、捨てがたい味わいが感じられた。またこの映画、怪物による水死事件と平行して、海底のウラン鉱床をめぐるサスペンスが展開される。しかしそのサスペンスパートが、登場人物たちをろくに捌けず、明らかに強引に片付けた感じなのが気になった。特に助手と女スパイの顛末はアッサリしすぎてて最早シュールの域に達しており、作品を盛り上げるどころか、一段とマヌケな味わいを添えていたのである。
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