百万の眼を持つ刺客         「評価 D」
破産寸前の農場を経営するアランは、娘サンディを大学に行かせるべきか否かで妻キャロルと対立していた。ある日、キャロルが1人で家の中にいると、ジェット機が通過するような轟音が鳴り響き、家中のガラスが割れてしまった。キャロルはどこかの飛行機が危険な低空飛行をしたと考え、保安官に連絡した。だがその時、周囲に飛行機は飛んでおらず、取り合ってはくれなかった。いったい轟音の原因は何なのか。首を傾げるキャロルたちだったが、これはまだ恐怖の序奏にすぎなかった。その日からというもの、町中の動物たちが突如として凶暴化し、人間に襲い掛かってきたのだ。更に隣に住んでいた精神病の男まで狂いだし、サンディに襲いかかる。実はあの時、アランの家の上空を通過したのは、エイリアンのロケットだった。エイリアンは何百万光年の彼方から地球に到来し、農場付近の砂漠に着陸。あらゆる動植物の精神に乗り移り、地球を征服しようとしていたのである。そこでアランは愛する家族を守るため、サンディの恋人ラリーと共に、エイリアンのロケットへと向かった…。
不仲だった家族がエイリアンの襲来によって絆を取り戻す、ロジャー・コーマンがデビューして間もない頃に製作した侵略SF。タイトルの「百万の眼」というのは、無数の動植物を操れるエイリアンの能力のことを指している。大人しい動物たちが豹変して人間を襲うプロットは「鳥」や「猛獣大脱走」を彷彿とさせるが、本作はそんな動物が人間を襲うシーンが最高にトホホな出来だった。例えば犬がキャロルに襲い掛かるシーンでは、犬はどう見ても尻尾を振って歩いてきているだけだ。なのにキャロルは異常なまでに怯え、銃や斧を取り出して反撃に出ようとするものだから、物凄く滑稽に見えてしまった。牛が近所のオヤジに襲い掛かるシーンも同じような感じで、のんびり歩く牛と、顔面蒼白死に物狂いのオヤジを交互に写し、素晴らしいまでに笑いを誘ってくれた。また、ロケットに潜んでいるエイリアンの本体(と言ってもエイリアン自身には実体がないので、どこか別の星の生物に乗り移った姿らしいが)は、「金星人地球を征服」や「暗闇の悪魔 大頭人の襲来」などで有名なポール・ブレイズデルによる造形で、眼球剥き出しの昆虫然としたデザインが存在感を示していた。しかし出番がラスト数分で、おまけに正面からのアングルのみで写されるおかげで、その造形をろくに堪能できないのは至極残念。モンスターの魅力という点では、「金星人地球を征服」などの後年の作品に大きく劣っていた。
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