生首情痴事件 「評価 B」
資産家の娘・藤山玲子は、亡くなった父から大量の株券と土地と譲り受けた。それが面白くないのは、財産目的で婿養子になった夫だ。彼は愛人と結託し、知り合いの医師から貰った睡眠薬で玲子を眠らせると、線路に寝かせて殺害した。警察はこれを事故と見なし、夫は見事に財産を譲り受けた。ただ、現場からは玲子の生首が消えていた。その後、夫は愛人と共に不動産屋を訪れ、手に入れた土地を売り払おうとした。ところが契約書に判子を押そうとした時、目の前に生首の玲子が出現。夫は驚いてタバコを落とし、契約書を燃やしてしまった。更にその炎が愛人の顔を激しく焼き、彼女は例の医師がいる病院に入院する羽目になったのだ。夫は、醜く変わり果てた愛人を見捨て、病院の看護婦に情欲を注ぐようになる。だがこの看護婦は、医師と結託して、夫が手に入れた財産を横取りしようと企んでいた。夫と、愛人と、医師と、看護婦。愚かな欲にまみれた4人の男女は、玲子の幽霊に幻覚を見せられ、病院の一室で激しく争い始める。玲子はその様子を、部屋の隅から静かに眺めていた…。
「怪談バラバラ幽霊」「沖縄怪談逆吊り幽霊・支那怪談死棺破り」と並ぶ、大蔵映画製作による現代怪談の一本。本作は「怪談バラバラ幽霊」と同じくパートカラー作品なのだが、特筆すべきはパートカラーの意図が明確な点である。「怪談バラバラ幽霊」では同じシーン内でもカットごとにカラーとモノクロが切り替わり、しかも極めてどうでもいい場面にカラーフィルムが使われ、パートカラーにしたことに意味があるのか理解に苦しむ出来だった。対して本作は、夫と愛人の濡れ場や、生首の初登場など、作品のアピールポイントとなる箇所に集中してカラーフィルムが使われており、ちゃんとパートカラーに意味を持たせていた。特に映画のクライマックス、玲子に幻覚を見せられながら4人の亡者が殺し合う場面は、それまでモノクロでよく見えなかった愛人の爛れた顔が、カラー映像でアップで映し出され、かなりのインパクトを与えてくれた。途中で不自然な場面転換が何箇所かあったのは気になったが、3作品の中では一番楽しめる作品である。
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