昆虫大戦争                 「評価 D」
未だ冷戦が続く、1968年。亜南諸島の上空を飛行していた米軍の爆撃機が、蜂の大群の襲撃を受け墜落した。機には水爆が搭載されており、万が一東側のスパイの手に渡ったら大変なことになる。すぐさま米軍は捜索隊を派遣したが、発見された爆撃機の中に水爆の姿は無かった。またパラシュートで近くの島へ脱出した乗組員たちは、洞窟で全身の肉をえぐられ、無惨な死に様を晒していた。唯一生き残っていた黒人兵チャーリーも、崖から落ちたショックで記憶を失っており、水爆の行方は闇の中に。一方、乗組員たちの落とした腕時計を偶然拾った昆虫採集家の秋山は、彼らを殺した嫌疑をかけられ、警察に捕まってしまう。秋山と長い付き合いだった生物学研究所の南雲博士は、彼の濡れ衣を晴らすため、事件の調査を開始する。その結果、南雲は恐るべき真実に辿りつく。この亜南諸島では、ナチに家族を殺された女性科学者が、戦争を繰り返す人類を根絶やしにするため、東側の援助によって新種の殺人蜂の研究開発に取り組んでいたのだ…。
「宇宙大怪獣ギララ」の 二本松嘉瑞監督による、刺した人間をキ○ガイにする蜂の大群が猛威を振るう昆虫パニック映画。本作は12年ぐらい前に一度見て、あんまりにもひでーラストが強烈に印象に残っていた。そして今になって改めて鑑賞したら、ひでーのは別にラストだけに限らないことが分かり愕然とした。まず主人公の南雲博士は、暴れる蜂たちを自然界の代表と捉え、「人類が東西冷戦や核の拡散を続けているから、自然が牙を剥いたんだ!」としきりに米軍に訴える。でもこの蜂は人工的に作られており、高度1万メートルだって平気で飛んでしまう、自然とは程遠い生物兵器だ。明らかに「自然vs人間」の構図が成立しておらず、南雲博士の主張が完全に上滑りしていたのである。また昆虫の専門家であるにもかかわらず、殺人蜂の巣窟となっている島に防護服も着ないで背広で乗り込むのも相当ヘンだ。主人公がこんな有様なら、他の連中だって大概だ。秋山は妻との愛を誓い合った直後に他の女とベッドインするようなどうしようもない奴だし、女性科学者は人体実験に使った人間を野放しにして、殺人蜂の存在を主人公たちに教えてしまうウッカリさん。米軍は麻薬中毒者に水爆の輸送なんて危険な任務をさせる異常組織であり、そんな米軍の司令官は、東側諸国から水爆を守るためならば、行方不明の水爆を平気で爆破してしまうような鬼畜軍人だ。こんなろくでもない登場人物たちが織り成すストーリーは破綻に破綻を重ね、何もかも放り投げた衝撃のラストへとなだれこんでいく様は、まさに狂気という他なかった。ただこの映画、蜂が人間の皮膚を噛むのを間近で捉えるカットや、死体の傷口に蜂の子が蠢く様子など、エグい描写は同じ脚本家の「吸血鬼ゴケミドロ」さながらに頑張っており、その点だけは評価できた。
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