空飛ぶ生首                 「評価 B」
天才ジャズピアニストのトムは、資産家の娘メグと結婚することになり、式を執り行うために彼女の実家がある島に滞在していた。だがそこへ、彼の昔の恋人で仕事仲間の歌手ヴァイがやってきたから大変だ。夜の灯台で復縁を迫るヴァイと、口論になるトム。その時、ヴァイの寄りかかっていた手すりが壊れ、彼女は身を投げ出した。足場にしがみつき、助けを求めるヴァイ。しかしトムは、彼女を救おうとせず、力尽き、海に転落していく様を、ただ見ているだけだった。翌朝、トムはヴァイの水死体を発見し、浜辺に運び込む。すると死体は、彼の目の前で海草となって消えてしまった。単なる見間違いなのか。トムは釈然としないながらも、メグの実家に戻っていった。ところがその後も、同様の怪現象が続発し、トムを翻弄する。更にヴァイを乗せてきた船乗りが、トムが彼女を殺したことに気づき、脅迫してきた。精神は蝕まれている状態での追い討ちに激高したトムは、自分の幸せを守るため、結婚式の前の晩、船乗りの殺害を決行した…。
「戦慄!プルトニウム人間」「世界終末の序曲」「巨大生物の島」など、粗い合成技術とミニチュア撮影によって、多くの巨大モンスター映画を世に送り出してきたバート・I・ゴードン監督。普段は生物の巨大化にばかり使われている彼の映像技術が、珍しく等身大の幽霊の表現に活用されたのが当作品だ。「空飛ぶ生首」という邦題の通り、幽霊となったヴァイが首や手だけの姿となってトムの前に現れ、追い詰めていく。技術が稚拙で、巨大生物が半透明になるのもザラなバート・I・ゴードン作品だが、本作では幽霊という設定のため、合成された首や手が透けてもまるで違和感がなかったのは目からウロコだった。ストーリーの方も、こじんまりとした怪談話ではあるが、破滅していく人間をドライに描いており見応えがある。他のゴードン作品に比べると地味ながらも、しっかり楽しませてくれる佳作だった。
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