人肉晩餐会             「評価 C」
1994年、香港。警察は行方不明の女性グレース・リーを探すため、風俗ビルの一室を捜索していた。女警官が大きなムスティのぬいぐるみを手に取ったところ、その中からはグレースのものと思われる頭蓋骨が。たちまち風俗店のオーナーであるホク・チャンと、従業員のジョー・ヤン&ケイ・チュンは逮捕され、取調べを受けた。彼らは無実を訴えるばかりで埒が明かないので、警察はホクの愛人のジジから証言をとったところ、あまりにもやるせない事実が明るみに出た。かつてグレースは、ヘロインを吸うための金欲しさから、闇金も営んでいるホクから大金を借り、返済のために彼の風俗店で働くことになった。しかし不細工な上に性格も悪いものだから、ろくに客がつかない。金に困ったグレースは、ホクの財布から金を抜き取って逃走を図った。激怒したホクはジョーとケイに彼女の捜索を行わせ、数日としないうちに連れ戻すと、制裁として凄惨なリンチを加えた。度重なる暴力はグレースを見る見るうちに衰弱させる。彼女は現実から目を背けるため、ホクの戸棚からヘロインを盗んでは、密かに吸引するようになった。それに気づいたホクは、劇薬をヘロインに偽装して戸棚に置いた。そうとは知らずに薬を吸引したグレースは、即死した。ホクたちはグレースの死体をバラバラに解体すると、鍋で煮込んで骨だけにして、ゴミとして処分したのである…。
実話を基にしたという触れ込みの香港猟奇犯罪映画。被害者のグレースはヘロイン中毒の上に高慢な性格だし、加害者のホクたちは絵に描いたようなヤクザで、主要人物に誰一人感情移入することができず、非常にいや〜な空間ができあがっていた。本作ではそんな社会の汚点どもによるリンチショーが延々と繰り広げられおり、その内容は、頭から湯をかける、つるし上げて人間サンドバッグにする、ストローを火で溶かして脚にたらす、冷蔵庫の中に入るように命じる、便器にたまったウンコを食べさせる──などなど、実に多種多彩だった。しかし先述のとおり、本作はリンチする側もされる側もクズなものだから、観ていて爽快感も不快感も大して湧かず、ただ漫然と眺めることしかできなかった。クライマックスの死体解体は解体する側にばかりカメラが向けられ死体がろくに写されず不満が残るし、その後の人肉スープも原形をとどめぬほど煮込まれた状態で出てくるので物足りない出来だ。
むしろ本作で一番胸糞悪くなったのは、ジョーとケイが町で見かけた子犬をビニール袋に詰め、壁にたたきつけて殺害する場面だ。このシーンはストーリーにおいて全く必然性が無い上、自業自得のグレースと違って何の罪もない犬が被害に遭っており、犬好きとしては並々ならない不快感を覚えてしまった。
TOP PAGE