魔獣星人ナイトビースト          「評価 C」
とある宇宙船が太陽系を飛行中、隕石と衝突し、アメリカの田舎町へと墜落した。すると船に乗っていた2匹の宇宙人・ナイトビーストは、事故に遭ったことへの腹いせか、町の住民たちの虐殺を開始。たちまち町には死体の山が積み重なり、保安官のジャックとリサは騒ぎを止めるため、ナイトビーストを退治するため出動した。ところが奴らには銃弾が効かない上、光線銃の反撃を受け、ジャックとリサは逃げるので精一杯だった。最早この町は、滅びの時を待つしかないのか。そんな中、町医者のジェイミーはナイトビーストに遭遇し、咄嗟のひらめきで電流を浴びせてみた。するとナイトビーストはもがき苦しみ、息絶えたではないか。奴らの弱点は電流だ。そうと知ったジェイミーは、ジャックら生き残りの住民と共に発電所に立て篭もり、残る一匹を誘き寄せて感電死させる作戦に出た…。
ウルトラロークオリティな映画づくりで知られるドン・ドーラー監督による、トロマ配給のSFホラー。ナイトビーストは鋭い牙を剥きだしにした顔といい皺だらけの表皮といい、その造形自体は悪くない。だがこのマスク、当然のごとく可動部分は存在しない。なのにそれを隠そうとする努力を微塵とせず、ナイトビーストの顔を長回しのカットでアップで写し続けるようなことを平然とするものだから、目を見開いて口を半開きにしたまま人間を攻撃し続けるという、何とも哀しい光景ができあがっていたのだ。本作には、このような「素材はまずまずなのに映像にすると悲惨」という事例が山のように存在した。例えば、ナイトビーストが住民を襲うシーン。人々は内臓を抉られたり首を引っこ抜かれたりと、H.G.ルイスの作品ばりにグロテスクな死に方をしていく。しかし気の抜けるBGMと間延びした演出が殊更に足を引っ張っており、どんなにメイクを頑張っていても、こみ上げてくるのは脱力感ばかりだった。また作中には、荒くれ男によるレイプシーンや、ジャックとリサのベッドインといったピンク要素も存在する。でもレイプシーンはすぐに画面が切り替わってしまうし、ジャックとリサの情交は「足を怪我したジャックを治療しようとリサがズボンを下ろしたら欲情した」というギャグそのものな発端で、興奮以前に笑いが湧き上がる代物だ。そんな腑抜けた要素だらけの本作において、特に異彩を放っていたのが、ジェイミーがナイトビーストの一匹目を感電死させる場面である。地下室でナイトビーストに追い詰められたジェイミーは、逆転の策を思いつき、実行に移す。まず電気コードを切って床に置くと、蛇口をひねってバケツに水をためて床にまき、またバケツに水をためて床にまき、またバケツに水を……って、そんな悠長なことやってる場合か! でも親切なナイトビーストさんは、ジェイミーが準備を整えるのを律儀に待ち続け、大人しく感電死してくれた。あまりのマヌケさに、終始乾いた笑いが止まらない珍作である。
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