アイス・ツイスター 「評価 C」
オレゴン州の片田舎。気象学者のジョアンは政府機関の支援のもと、何もない空から雲を作って雨を降らせる人工降雨装置のテストを行っていた。装置を上空にばらまいたところ、雲が発生して雨が降り、実験は成功したかに見えた。ところがその直後、数十キロ離れた町で急激に気温が低下して突風が生じ、死者が出る騒ぎとなった。雲を作ったことで周辺の大気に影響が及び、超低温の嵐が巻き起こったのだ。その後もオレゴン州では同様のアイス・ツイスターが相次いで発生し、犠牲者を増やしていく。そんな中、ジョアンはかつて上司をしていたSF作家のチャーリーと再会し、彼の助言を仰ぐことにした。するとチャーリーはこの事態を打破するため、1つの策を立てる。それは人工衛星を使ってオゾン層に穴を開け、太陽光で中間層を暖めることで嵐を消すというものだった…。
「ツイスター2008」「ジュラシック・プレデター」のスティーヴン・R・モンロー監督による竜巻パニック映画。「アイス・ツイスター」というタイトルの通り、本作の竜巻には超低温という付加価値がついている。その割には、低温の恐怖が存分に描かれているとは言い難かった。竜巻の近くを車で通り過ぎても路面や車が凍ることによるトラブルなんか一切無いし、ジョアンとチャーリーは土管に隠れて竜巻をやり過ごしても凍傷1つ負わない。たまに思い出したように壁や地面が凍りつく描写が出てくるが、作中の被害の9割以上は竜巻そのものによるものであり、わざわざ低温の要素を加える必要があったのか、疑問に感じてしまった。
そんな若干看板倒れ気味の本作だが、住民たちがちゃんと避難指示に従っていたのには感動した。馬鹿な住民が避難指示を聞かないせいで大惨事に──なんて凡百のパニック映画のようにはならず、避難指示が出された以降は市街地がゴーストタウンと化している。おかげでジョアンたちと災害の攻防に焦点が絞られ、非常に安心して鑑賞することができた。
最後に余談だが、本作における災害の解決法「オゾン層に穴が開いたら太陽光で中間層が熱せられる」は、「オゾン層に穴が開いたら超低温の大気が降りてくる」という「サイレント・ワールド2011」の主張と真っ向から対立していた。どちらが真実に近いのかは分からない。ただ本作には、チャーリーがファンから「作品には災害を防ぐ方法が出てきますが、実際に効果があるんですか?」と問いかけられるシーンがあり、作品の科学考証というものについて考えさせられてしまった。
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