サイレント・ワールド2011 「評価 C」
オーストラリアの国際気象研究所に勤めるジャックは、たびたび転勤を命じる上司と、それを快く思わない妻子との間で、板ばさみの日々を送っていた。そんなある日、行方不明になっていた観測船が海岸に漂着した。船の中は水浸しになっており、乗組員は全員凍死している。オゾン層に亀裂が生じたことでマイナス70度の寒波が地表に降り、あらゆる物を凍結させていたのである。やがて寒波はタスマニア島、そしてオーストラリア本土へと到来し、多くの人間が凍死していく。更にオゾンの亀裂は世界各地に発生し、襲来する寒波によって、東京が、ロンドンが、モスクワが、瞬く間に氷に閉ざされた。そこでジャックは娘を研究所に避難させ、事態を打開する策を打ち立てた。中間層に硝酸マグネシウムを搭載したミサイルを撃ち込むことで、オゾン層の亀裂を塞ごうというのだ…。
「アトミック・ドッグ」「ジョーズ・イン・ツナミ」のブライアン・トレンチャード=スミス監督による、地球凍結パニック映画。「サイレント・ワールド」と邦題のついた作品は、「〜セカンド・アイスエイジ」も含めて災害シーンが陳腐で大変残念な出来という印象が強かったが、本作はそのイメージを覆すなかなかの良作だった。何と言っても寒波の描写が圧巻。白い霧が海の向こうから押し寄せ、町全体を凍結させていく様はスペクタクル感抜群で素晴らしかった。世界各地の主要都市に寒波が到来する光景をしっかり映像で見せてくれ、作品にスケール感を持たせていたのも評価できる。
しかしこの映画、クライマックスになると急に作品世界が萎んでしまう。世界規模の災害を食い止められるかどうかの瀬戸際に、突然研究所の同僚の女性が苦しみ出す。彼女は糖尿病を患っており、症状を和らげるにはインスリンが必要だ。そこでジャックはインスリンを探すため、極寒の町に出ていく──って、なんでこんな微小スケールのトラブルを見なきゃならんのだ! それが解決した後も、研究所で停電が発生し、ジャックが復旧させようとする──と、これまたマイクロなトラブルが発生してゲンナリさせてくれる。災害の描写は文句ないのだが、こんな外しっぷりはやっぱり「サイレント・ワールド」と邦題がつく作品だなあ、と強く実感した。
TOP PAGE