アルマゲドン・パニック          「評価 D」
直径50キロの巨大隕石の軌道が太陽風の影響で変化し、時速9万キロで地球に飛来してくることが判明。アメリカとロシアは極秘で様々な対策を試みたものの、ことごとく失敗し、隕石の襲来は確実なものとなった。そこで各国政府は、衝突の72時間前に国民にその事態を発表した。たちまち世界はパニックに陥り、秩序は完全に崩壊した。至る場所で自殺者が続出し、刑務所では看守たちが逃げたために囚人たちが脱獄する。そんな中、スペインの小さな町に暮らす電気修理工のアレは、母親と共に親戚の家を訪れ、静かに終末の時を迎えようとする。しかし母親は、囚人たちが脱獄しているというニュースが気がかりでならなかった。アレの兄トマスは幼い頃、ソロという凶悪犯を逮捕するのに協力していた。そのソロが脱獄し、自分たちに復讐しに来るのではないかと危惧していたのだ。その日の夜、母親は家の外に人の気配を感じ、銃を持って外へ出て行った。だが翌朝、彼女は惨殺体となって発見される。彼女の予感は的中した。ソロが恨みを晴らすため、家までやって来たのである…。
スペイン産の天体パニック映画──に見せかけたサスペンス映画。冒頭の人工衛星が破壊されるシーンといい、クライマックスの隕石落下といい、VFX自体はハイクオリティで満足できる。しかし本作、隕石の映像は最初と終盤に流れるだけ。災害よりもむしろ、終末を目前に控えた人々の姿に比重を置いた内容となっていた。このようなタイプの作品は「渚にて」や「アトミック・パーティー 核破壊都市X」など数多くあり、それ自体は何も問題は無い。だがこの映画、外界から隔絶された町外れの一軒家を舞台とし、あまつさえ凶悪犯との対決なんて要素を盛り込んだのがまずかった。大人たちは子どもたちに、隕石や脱獄囚のことを知らせようとしない。それどころか何も知らない子どもたちの行動を何度も叱り飛ばし、終末前を穏やかに過ごすどころか、物凄くピリピリした空気が漂っていたのである。そこへ脱獄囚が襲撃してきたとあっては、最早終末のことなんか考えている余裕は無い。結局登場人物の殆どがストレスを抱えたまま隕石襲来の時を迎えてしまい、そこには「渚にて」のような気高さは微塵となかった。何とも晴れない気分になる作品だった。
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