アフター・デイズ             「評価 A」
この1万年、人類は大自然を征服してきた。地上では道路を舗装し、無数の建造物を立ててきた。海では巨大な船を走らせ、多くの魚を捕ってきた。空では飛行機を飛ばし、宇宙には人工衛星を浮かべている。そんな人類が、ある日突然消えた。すると世界はどうなるのか。これは人類によって征服された自然が、人類消失から長い年月をかけて再生するまでをシミュレートした作品である。
人類が消えたことにより、まず発生するのは乗り物の事故だ。道路では車が玉突き事故を起こし、列車も脱線転倒、飛行機も相次いで墜落。大抵の発電所は電力を供給し続けるが、石炭の供給で稼動する火力発電所は停止。風力や水力、原子力発電所はしばらく動き続けるがコンピューターが異常を検知して自動停止し、電力の供給はストップ。核燃料貯蔵庫の冷却装置が停止したことで、死の灰が撒き散らされる。周辺一帯の草木は枯れ果て、死の大地に変わり果てる。人類がいなくなったことで、地球は大きな災害に見舞われた。しかし大いなる自然は、ここから驚異の再生を遂げていった…。
人類が消えたことで起こりうる様々な事象を追ったこの映画。基本的に淡々としたナレーションで進行するが、動物園から逃げた動物たちが町を闊歩する様子や、コンクリートの建造物が風化していって崩れ落ちる様子、そして世界各地の建造物が時間の経過と共に崩壊していく光景など、視覚的な見せ場も多くて楽しめた。
またシミュレーション内容も、開拓された農地から人工衛星まで実に多岐にわたっている。特に人類が消えたことによりペットたちが味わう地獄絵図は、東日本大震災で実際に起こった惨状を知っているから犬好きとして居たたまれなかった。一方で「ゴキブリは生命力が強いと思われているが、温暖な場所に棲んでいないゴキブリは暖房設備が停止することで大量に死滅する」とか「地球上から人類の痕跡が消えても、環境変化のない月面上では月面車などが数百万年は残り続ける」といった、普段考えもしないアプローチからの考察が盛り込まれているのも興味深かった。
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