ワールド・エンド 「評価 B」
2007年、気候変動に関わる政府間パネルがノーベル平和賞を受賞した。今なお進行を続けている地球の温暖化。このままでは未来の地球はどうなってしまうのか。これは最新の研究結果に基づいて、2075年の地球をシミュレートした作品である。
本作は未来の地球の姿を、4つの舞台から描いている。製作国であるフランスとカナダ、温暖化の深刻な場所として北アフリカ、そして温暖化対策のための世界会議が行われているハンブルクだ。
フランスのボルドーで先祖代々ワイン農園を営んできたジュリア。しかし年々降水量が低下している上にイナゴが大発生するようになり、脆くもブドウは全滅してしまう。そこで虫害に強いオレンジを育てることにしたが、政府から供給される水道水の量も規制が厳しくなるばかりだ。温暖化により世界各地の水源を支えていた山々の雪がなくなり、世界中が水不足に陥っていたのである。
カナダでは動物学者のニルズが、環境保護家グレースのもとを訪れる。彼女は人類がもたらした温暖化によって年々多くの動植物が絶滅していることから、人類であることを恥じ、山奥で隠遁生活を送っていた。ニルズはそんな彼女にハンブルクの会議に出席してスピーチをしてもらうようにお願いするが、グレースは今更他の人間に働きかけるようなことはしたくないという。だがその時、絶滅したと思われていた野生のホッキョクグマが、北極海で目撃されたとの情報が入ってきた。まだ世界には希望が残されていた。グレースとニルズは、ホッキョクグマの生存を確かめるために北極海へと飛んだ。
北アフリカは、死の大地と化した。年々上昇する気温により井戸は枯れ、作物は育たず、人々は日々を食いつないでいくだけでもやっとの有様だ。そこでとある村の若者イドリとファウジは、出稼ぎのためにヨーロッパへ行くことにした。オアシスも干上がった死の砂漠を越え、2人はタンジールにあるヨーロッパ人材センターへと辿りつく。温暖化による海面上昇で世界中に難民が発生しており、ヨーロッパは治安の悪化を懸念して、若くて健康な者だけを入国させるようにした。センターでは健康診断や知能テストが行われ、テストに合格した者だけが入国を許可される。その結果、イドリのみが合格し、ファウジはアフリカの大地に取り残されることになった。
本作は洪水や難民たちといった、現代の記録映像で表現できるところは、極力有り物の流用で済ませている。ならば視覚的見所は無いのかと言えばそんなことはなく、パリの中心市街が日除けと芝生とソーラーパネルだらけになっていたり、モロッコでは砂漠化防止のために無数の廃車が万里の長城のごとく積み上げられていたり、空港から飛行機の姿が消えて飛行船が並んでいたりと、温暖化対策がなされた世界を様々な角度から捉えており、結構見応えがあった。ただこの映画、温暖化の危機を訴えるのが目的なのに、「それでも未来の人類は何とかうまくやっている」という終わり方にしたのはどうなのか。「生活できるんなら問題ないじゃないか」と捉え、未来を楽観視してしまう人がいるのでは、と心配してしまった。
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