モンスター・マウンテン 「評価 C」
死火山のはずのリンカーン山で、地震が頻発するようになった。地質学者のエミリーが調査を行ったところ、山の地表には大量の二酸化炭素が充満している上、地底に莫大なエネルギーが溜まっており、明らかに危険な様子。エミリーは保安官に呼びかけて近隣の住民たちを避難させるが、元恋人のトマスから、妹グレースが山にキャンプに行ったきり戻ってきていないことを知らされた。エミリーとトマスはグレースを助け出すため、リンカーン山に足を踏み入れた。しかしリンカーン山は、2人の想像を遥かに超えた異常事態と化していた。大木ほどはあろうかという触手が頭上を行き交い、割れた大地からはビルを丸呑みにできるほどの巨大な口が姿を見せる。有史以前より地球に潜んでいた、伝説の怪物ビヒモス。そいつが環境破壊に伴う異常気象により、永い眠りから目覚めようとしていたのだ…。
これは凄まじい作品を観てしまった。第一にこの映画、ビヒモスの造形が素晴らしい。頭部を囲むように円状に生えているクモのような足、足の付け根から伸びた無数の触手、そして鋭い牙を生やした口と、どれをとっても格好いいの一言。しかもそれが尋常でない巨大さで、山頂をぶち抜いて山をまたぐように全貌を現すのだから、出現シーンでは我を忘れて興奮の叫び声をあげてしまった。またストーリー上においてもこいつについて、「文明を滅ぼす存在だ」「地球に裁きを与えるぞ」とか、その壮大さが何遍も何遍も語られる。これは後半、世界規模の大破壊を繰り広げるための布石に違いない。造形も格好いいし、きっとド派手な暴れっぷりが拝めるはずだ! ──と私は、期待で胸が一杯だった。
ところがこのビヒモス、びっくりするほど見掛け倒しな奴だった。それはもう、怪獣映画史に残ると言っても過言でないぐらいに。
全体像を現したビヒモスが、初めて見せた破壊活動。それは主人公たちめがけて、触手の一本をペチペチ振り下ろすだけだった。世界を滅ぼす怪物が、なんでそんなちっぽけな人間に構ってるんだよ! 私は大いにずっこけた。その後もビヒモスは、山ほどの巨体を持っていながら大規模破壊らしいことを何一つしなかった。それどころか、政府機関が用意したミサイル一発でアッサリ爆死してしまうという虚弱ぶり。最後の最後まで観る者の期待を裏切り続けた奴だった。
結局のところ私は、ビヒモスの格好よさに完全に騙された形になってしまった。何とも罪作りな映画である。
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