呪われた海の怪物        「評価 D」
革命後のキューバでは、バチスタ政権の有力者たちが、財産を持って相次いで国外逃亡を図っていた。カストロの隆盛を阻止したいアメリカはそんな彼らを陰ながら支援しており、脱出の手引きをするエージェントたちをキューバに派遣。水面下でカストロの軍と戦いを繰り広げていた。そしてある日、エージェントのXK150は新たな任務として、トスターダ将軍の脱出の手助けをすることになった。つつがなく将軍を港まで護送し、アメリカ政府が用意した船に乗り込む一行。ところがこの船の持ち主レンゾは、将軍の金塊を横取りせんと企む悪党だった。この近辺の海に棲むという伝説の魔物の仕業に見せかけ、彼とその一味は将軍の側近を次々と殺害。あまつさえ将軍まで手にかけて、金塊を独占しようとした。しかし一方で、そんな彼のことを海中から覗いている奴がいた。両手に鉤爪を生やした、全身毛むくじゃらの醜悪な怪物が…。
1961年、「地球最後の女」を予定より早く撮り終えたロジャー・コーマンが、残った6日間を利用して超ハイスピードで撮影したモンスターパニック。同じような制作経緯のコーマン作品に「古城の亡霊」があるが、本作はあちらと違い、実力のある役者を使っているわけでもないし、古城みたいな大々的な撮影舞台があるわけでもない。ましてやモンスター映画である以上、作品の顔となるモンスターを6日のうちに新規に作らなければならない。これほどの悪条件が重なった結果、本作は「古城の亡霊」とは比べ物にならないほど貧相な作品に仕上がっていた。まず怪物からして悲惨の一言。レインコートにモップを被せたような体に、目はテニスボールという、ポンキッキのムックにクリソツな外見は一部で有名だが、こいつは人を襲う場面においても情けさな満点で、ただヨロヨロ動いて抱きつくだけ。せっかくの鉤爪が全く活用されず、魅力も何もあったものではなかった。また本作、急いで撮った都合上、明らかにカットが足りず、場面間の繋がりが不自然な箇所が多々見られるのも厳しい。一応唐突な場面転換の際には、XK150のモノローグで状況説明がされるのだが、それでもなお違和感を払拭するには至っていなかった。ただこの映画、冒頭でハードなスパイものらしい雰囲気を醸し出しておきながら、いざオープニングに突入すると一転。怪物とキューバ軍が追いかけっこをするマヌケなアニメーションが流れ、そのギャップには爆笑させられた。
TOP PAGE