エンド・オブ・フューチャー       「評価 B」
男が目を覚ますと、そこは薄暗い地下空間だった。自分が何者か、何故ここにいるのかも分からないまま、男は“エデン・ログ”と呼ばれる広大な空間を彷徨う。しかし幾ら歩けども、見えるのは湿った岩肌と、謎めいた装置と、天上から伸びる樹木の根ばかりだった。やがて男は、この空間の管理を任されているという1人の技師と会う。技師の話によれば、“エデン・ログ”は巨大な樹木の地下にある政府の施設だという。樹木から採取した莫大なエネルギーを地上に送り、町の人々の生活を潤しているらしい。しかし最近、エデン・ログ内部で異変が起きていた。施設の最下層で働いていた人々が、樹木のエネルギーの影響で突然変異し、理性を持たないミュータントと化した。彼らは互いに殺しあいながら上へ上へと上がってきて、今では上層部にいた技師たちにも襲いかかり、施設の機能を完全にマヒさせているというのだ。そこで男と技師は、他の生き残りがいないか、ミュータントと戦いながらエデン・ログ内を探し回ることにした。だが探索の果てに男が目にしたものは、エデン・ログの裏に隠された、驚くべき真実だった…。
謎の施設に放り込まれた男が真実に辿りつくまでを追った、おフランス産のSFスリラー。何が何だか分からない状態からスタートする上、映像は終始暗く、画面内で何が起こっているのか把握するのが著しく困難。おまけに開始40分ぐらいまで登場人物は実質主人公1人しかいないのに、主人公は記憶が無いことも手伝って滅多に口を開かず、独白で映画の進行状況を把握することも不可能──と、非常に観客に対してドライな態度で展開される作品だ。そのため映画の前半部分では、樹木にとらわれた人間、施設に残された僅かな会話記録、施設内を徘徊する警備兵、といった極めて断片的な情報しか把握できないまま、ただ薄暗い画面を追わなければならない状況が続く。しかし中盤、主人公と会話してくれる人物──施設の技師が現れると、ようやく映画の方向性が見えてくる。技師の話から舞台設定がハッキリしたところで、映画はこれまで散りばめられてきた情報を含めた謎解きへと突入していくのだ。本作の肝はそれ以降の伏線が回収される過程になるのだが、前半部分も謎の散らせ具合が絶妙で、画面を追うのがそれほど苦に感じないのは良かった。伏線回収もちゃんと意外性のある形でまとめられており、オチは弱かったが満足することができた。ただこの映画、DVDの紹介文がネタバレしすぎているのは何とかして欲しかった。本作を観る前に紹介文を読んでいたら、舞台設定や映画開始時点の状況が頭に入った状況からのスタートとなり、謎解きの楽しみが大幅に削がれてしまうことだろう。
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