メガ・ピラニア             「評価 C」
ベネズエラのオリノコ川。アメリカ大使とベネズエラ外相がこの川をクルージング中、何者かによって惨殺される事件が発生した。テロリストの仕業とも考えられ、特殊部隊員のジェイソンは現地に派遣され、原因を調査することになった。空港を出た彼は、生物学者のサラと名乗る女性と出会う。何でも彼女の話によれば、今回の事件は新種のピラニアによるものだという。彼女たち研究チームは、食料自給率を上げるために魚の遺伝子改良に取り組んでおり、ピラニアの遺伝子を改造した新生物を創造。ところがこの生物はあまりにも凶暴すぎる上、放っておくと見る見るうちに自己進化を遂げる恐れがあった。そこで彼女たちはピラニアたちを処分しようとしたが、一部のピラニアが処分を免れてオリノコ川へと逃げ込んでしまい、川を通りかかる人々を無差別に殺しているというのだ。ジェイソンは初め、その話があまりにも荒唐無稽であるがため、到底信じることができなかった。しかし実際に殺された現場に行ってみると、そこには自己進化で巨大になったピラニアたちがウヨウヨしているではないか。すぐさまジェイソンはサラたちと協力して、ピラニアの駆除に乗り出した。ヘリの空爆、軍艦の砲撃、そして原潜の核弾頭。ありとあらゆる手段を用いて、巨大ピラニアたちを攻撃するジェイソンたち。だがピラニアの進化のスピードは人間の想像を遥かに上回っており、如何なる手段を講じても奴らを絶滅させるには至らなかった。そうこうしている間にピラニアたちは海水でも活動できるようになり、大西洋を北上し、マイアミにまで到達する。このままではアメリカ本土も奴らに蹂躙されてしまう。追い詰められたジェイソンは、ピラニアが血に寄ってくる習性を利用して、一匹のピラニアに傷を付けることでピラニアたちを寄せ集め、共食いで自滅させる作戦を立案。軍の小隊を率いて海岸線に陣取り、水中銃で巨大ピラニアの大群に立ち向かうのだった…。
「エイリアンシンドローム」のエリック・フォースバーグ監督による、ジャンボ魚類大量発生映画。はっきり言って映画の出来はお粗末もいいところだ。本作のピラニアは当初の普通サイズから、映画の進行に伴いサバサイズ、サメサイズ、クジラサイズ──と、どんどんスケールアップしていく。だがそれに伴いCGの粗雑さが露呈してきて、終盤になると目も当てられない有様になっていた。特にクライマックスの決戦シーンは、ただでさえ演出がワンパターンで見ているのが辛いと言うのに、VFXの質の低さがその酷さに拍車をかけており、最早黙って見続けるだけでも苦行と言える惨状だった。またこの映画、人間同士のアクションシーンも酷い。中盤にはベネズエラ国軍とのカーチェイスシーンが出てくるが、これがやたらと長い上に見せ方が単調で間延びした印象しか受けない。同じ巨大魚類映画の「ブルー・サヴェージ」におけるカーチェイスに比べたら、その出来には雲泥の差が感じられた。そしてこれだけで済めばいいのだが、困ったことに本作は脚本も酷かった。そもそもピラニアを川に逃がした張本人であるサラたちが何のお咎めもなしで、悪いのが全てベネズエラ国軍にされている時点で実にアレだ。中盤にはアメリカ軍が「SOS信号を受けていればアメリカ軍の戦艦がベネズエラ国土を無断で砲撃しても何の問題もない」という国際ルール完全無視の主張をするし、映画後半でジェイソンたちを追い続けるベネズエラ軍は完璧に当初の目的を見失っていて悪役以外の何物でもないし、ここまでベネズエラの扱いが悪いと、何故この映画の製作者たちはこんなにベネズエラが嫌いなんだろうかと勘ぐりたくなる。ベネズエラ旅行中に地元の人間にカツアゲでもされたのだろうか。それとも脚本家の女房がベネズエラの軍人と不倫して離婚でもしたのだろうか。いずれにせよ、脚本に関しても到底評価することはできなかった。
このように本作、酷い点を挙げれば星の数ほど出てくる。しかし私は、この映画をどうも嫌いにはなれなかった。これはひとえに、巨大ピラニアたちの異様なまでの味わい深さのおかげと言っていいだろう。本作のピラニアたちは泳ぐだけに飽き足らず、水面から勢いよくジャンプして獲物に食らいつくことができる。これは巨大サイズになっても相変わらずで、ひとたび川沿いの町を襲おうものなら、町の上空を無数の巨体が飛び交い、瞬く間に町に壊滅的な被害をもたらすのだ。そのスケール感溢れる襲撃の様子は、たとえ映像がボロボロでも非常に見応えがあった。また中にはお間抜けなピラニアがいて、ビルの外壁に頭から突っ込んで身動きの取れなくなった奴や、飛距離が足りず浜辺でもがいている奴とかが、さり気なく画面に写っているのもグッド。並々ならない哀愁を誘い、巨大ピラニアたちの魅力を一段と高めていた。
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