ハルマゲドン 「評価 D」
2010年、フランス政府は化石燃料に代わる新たなエネルギー源として、大型粒子加速器を稼動させるEVEプロジェクトを立ち上げた。それから半世紀後、フランス、スイス、スペインの三箇所に設けられた粒子加速器は世界各地に莫大なエネルギーを供給することに成功し、化石燃料の使用量を以前の半分以下に抑えることに成功。エネルギーの世界に新時代をもたらしつつあった。だが一方で、それまで石油を売って富を得ていた中東諸国は不満を露わにしていた。粒子加速器の存在は欧米諸国にとって、中東に対する経済的アドバンテージを与えていたからだ。そんな軋轢が続いていたある日、EVEプロジェクトの中心的存在だった科学者ラージャが、突然プロジェクトから外された。上層部は彼が外部に研究データを流出させたとしているが、実際はラージャがアラブ人で、中東側に肩入れする態度を取っていたことが原因なのは、誰の目にも明らかだった。そこで彼の親友で同じくプロジェクトに携わってきたウィンダム博士は上層部に異議を唱え、何とかラージャを研究に復帰させるべく奔走していた。そして、いよいよ事件が起こった。突如フランスの粒子加速器が暴走し、施設が大爆発を起こした。周囲50kmが焼け野原になり、数百万人が死亡する大惨事に。その影響はプレートにまで及び、世界各地で大規模な地震が発生。更に広大な範囲で電磁波障害が生じ、飛行機や人工衛星が次々と墜落。あれよあれよと言う間に、地球は滅亡寸前にまで追い込まれてしまった。すると上層部は、疑いの目をラージャに向け始めた。彼が事件の起きる前、中東のテロリストに会っていたというのだ。そこでウィンダムは彼の無実を晴らすため、そして事件の原因を突き止めるため、粒子加速器があったオルレアンへと向かうことにした。一面が死の世界に変わり果てたオルレアンで、彼は人々の救助を行いながら、粒子加速器が暴走した原因を探る。一方、ラージャは警察にマークされていたところを、謎の集団に助けられる。彼らこそが事件の黒幕、中東のテロリストグループだ。欧米文明の崩壊を目論む彼らは、不正アクセスにより粒子加速器を暴走させるためのデータを入手し、フランスでそれを実践した。だがそれだけに飽き足らず、今度はスペインの粒子加速器まで暴走させようとしていたのだ。それを実践するには入手したデータだけでは不十分で、ラージャの頭脳が必要だった。そこでテロリスト集団はラージャ博士を誘拐すると、スペインの施設に潜入し、瞬く間にこれを占拠。ラージャ博士を脅迫し、粒子加速器を暴走させようとした。ウィンダム博士の知らぬ間に、地球消滅のときが、刻々と迫りつつあった…。
「サイレント・ワールド」「ジャッジメント・デイ 地球崩壊」のジェフリー・ビーチ製作による、終末パニック映画。大爆発に地震に人工衛星の落下と、各種ディザスターをてんこ盛りに取り揃えた内容となっているが、肝心の災害シーンがスケール感に乏しくチープな印象で、ろくに楽しめなかったのが残念だった。脚本も主人公のウィンダムが全くと言っていいほど活躍せず、せいぜい災害現場に行って救助活動をするぐらいで、一向に盛り上がらない。そもそも世界の存亡がかかっている肝心な時に、災害に苦しむ人が目に入ったらと言って、調査を放り出して救助活動にとりかかるのは如何なものか。爆心地周辺は放射能汚染が酷く、防護服なしでは生きられないという設定なのだから、どの道救助した人間も助かる見込みは無いというのに。また救助活動中、ウィンダムたちは様々な危険に苛まれることになる。ここでプロジェクト責任者の彼の身に何かあったら、それこそ世界の終わりだと言うのに、それでもウィンダムは救助をやめようとしない。なんて慈愛に満ちた……いや、思慮に欠けた人間だろう。ラストのオチも酷いの一言だし、どうにも評価できない作品だった。
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