クリーパー              「評価 D」
穏やかな田舎町で、猟奇的な殺人事件が発生した。被害者は素手で骨を折られ、頭蓋骨を砕かれており、明らかに異常者による犯行だ。そこで警察署長のネッドは、事件を早期解決するべく、異常犯罪の捜査を得意とする名探偵ブロック・ジョンソンに協力を要請することを決めた。早速町長のライリーに、ジョンソンを雇うための予算を出してもらうように掛け合うが、町長は予算を出すことに及び腰だった。実はこの時、町は大学を誘致するため、総力を挙げてイメージアップを図っていた。しかもライリー町長は、大学建設を当て込んで借金をしてまで町の土地を大量に買い上げており、もし殺人事件が明るみになってこの話が水に流れでもしたら、たちまち破産してしまう運命にあったのだ。だがそうこうしている間に、新たな殺人事件が発生。痺れを切らしたネッドは、被害者の無惨な写真を町長の眼前に突き出し、「こんな事件がまた起こってもいいのか!」と一喝。これにはさすがのライリーも参り、しぶしぶ予算を出すことを承認したのだ。かくして数日後、名探偵ブロック・ジョンソンがサンフランシスコからやってきた。ネッドが彼を家に招いて歓迎したところ、ジョンソンはネッドの娘ジェーンのことを甚く気に入り、2人はすぐに良い仲になった。翌日、ジョンソンは更なる事件の発生を防ぐためには市民の警戒心を高めるのが一番と、町長の意向を無視してネッド署長と一緒に記者会見を開き、事件のことを公表した。これに怒ったライリーは、何としてでも町のイメージを低下させまいと、警部補を抱き込んでネッドの信用を失墜させるための工作をしたり、ネッドを町から遠ざけている間に浮浪者を犯人にでっち上げて事件を解決したようにアピールしたりと、様々な姑息な策を弄す。しかしそれらは尽く無駄に終わり、大学建設の話はお流れになってしまうのだった。一方、捜査を進めていたジョンソンのもとに、タイプライターで打ったと思しき犯人からの脅迫状が届いた。「事件から手を引かなければ殺す」というものだ。ジョンソンはまるで気にすることなく捜査を続けていたが、ある晩、とうとう殺人鬼“クリーパー”が、ジョンソンの滞在するマンションに姿を現した。しかもこの時、ジョンソンはワインを買いに行くため部屋を離れており、部屋には遊びに来ていたジェーンしかいないという最悪の状況。クリーパーは凶器のナイフを持ってジェーンを追い回し、彼女は絶体絶命の窮地に追い込まれた。だが間一髪のところで、ジョンソンが戻ってきた。すぐさま殺人鬼は逃げ出し、ジェーンは命拾いした。後日、脅迫状を調べていたジョンソンは、文章を打ったタイプライターの書体から、犯人は旧式のタイプライターを所有しており、しかもつい最近それを修理したことに気づいた。直ちに町の修理店に問い合わせたところ、つい最近、旧式のタイプライターの修理をしたばかりだという。店の記録から犯人の住所を突き止めたジョンソンは、危険を顧みず、単身クリーパーの住家へと向かった。家の中に侵入したジョンソンは、背後からクリーパーの襲撃を受ける。ジョンソンは慌てて攻撃をかわすが、クリーパーの執拗な追撃は止むことがなく、すぐに隣家の中へと追い詰められてしまった。しかしここでジョンソンは機転を利かせ、キッチンに置かれていた酒を床にばらまくと、クリーパーをその上におびき出した。そこへ酒瓶から作った即席火炎瓶を投げ込み、彼を炎に包んだのだ。かくして猟奇殺人鬼は死に、事件は解決した。ジョンソンはサンフランシスコに帰ることになったが、名残惜しそうなジェーンに対し、一緒にシスコに来ないかと誘うのだった…。
巨漢の異常者クリーパーが巻き起こす連続殺人に名探偵が立ち向かう、トロマ産の殺人鬼ホラー。クリーパーが女子供もお構いなしに殺しまくる凄惨さはさすがトロマといった感じだが、困ったことに作品の出来まで凄惨そのものだった。まずこの映画、恐怖感というものが微塵とない。クリーパーが被害者を取り押さえた瞬間、場面が切り替わり、既に被害者は死んでいる──という、トロマらしからぬ猟奇描写のカットが何度も行われる。ではクリーパーが被害者を追い詰める描写で緊迫感を盛り上げているのかといえば、全然そんなことはなく、ただダラダラした演出で間を持たせているだけで、観ていてウンザリさせられた。また本作、脚本の方にも不満が残る。素直に殺人鬼と探偵の攻防だけにスポットを当てればいいものを、何をトチ狂ったのか町長の陰謀劇なんて非常にどうでもいい話を同時進行させ、なかなか事件の捜査が進展しないのだ。そしてとどめが作品の顔クリーパーで、ただ寡黙に殺人を繰り返すだけでキャラクター性が薄く、作品の退屈さに拍子をかけていた。なんとも楽しみどころに欠けた、悲惨極まりない映画だった。
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