ジャカルタ               「評価 B」
1984年、ジャカルタ。CIAインドネシア支部の諜報部員ファルコは、証人イーシャの護衛任務を与えられた。彼女は麻薬組織のリーダー・ドルフと近い関係にあり、数日後の裁判ではドルフの犯行を証言するのだという。イーシャに一目惚れしたファルコは任務を引き受けると、彼女とともに幸せな時間を過ごした。ある夜、イーシャのもとにドルフが現れ、彼女を車で連れ去った。ファルコはすかさず銃を撃ち、車のタイヤをパンクさせる。ところが進行方向がずれた車はガソリンスタンドに激突し、爆発炎上。ファルコは絶句した。
それから3年後。ファルコはCIAから遠ざかり、ニューヨークでふてぶてしい毎日を送っていた。だがモーテルで寝ていたところを何者かに取り押さえられ、気づいたらジャカルタへと送り込まれていた。わけも分からぬまま、ジャカルタの街をうろつくファルコ。すると市街地で、彼はイーシャらしき女性の後姿を目撃する。まさかイーシャは生きているのか。ファルコが女性を追って走り出すと、突如ドルフの手下たちが現れ、襲い掛かってきた。辛うじて刺客を撃退したファルコは、あの日死んだと思っていたイーシャが、ドルフともども生存していることを確信する。そしてインドネシア中を探し回った果て、ついに田園地帯でイーシャと再会することができた。ファルコはイーシャに、一緒に行こうと呼びかける。だがイーシャは、首を縦には振らなかった。彼女はドルフの監視下におかれており、自由に行動することができずにいたのだ。そうと知ったファルコはドルフがいるという村に侵入し、手下たちと大乱戦を繰り広げた後、ドルフを殺害。これでイーシャを縛るものは無くなった。しかしイーシャと出会ったファルコは、とんでもない事実を知ってしまう。かつてドルフに拾われたイーシャは、貧民だったことへの反動から、欲望の塊と化していた。3年前に裁判でドルフの犯行を証言しようとしたのも、ドルフを脅して財産の半分を手に入れようとしたためであって、決して正義のためなんかではない。そしてドルフが条件を呑むと、2人で車で爆死したように見せかけ、ファルコの前から姿を消したのだ。その後も彼女は贅沢の限りを尽くし、やがて自分のことを真剣に愛してくれたファルコを手に入れようと考えるようになった。そこでドルフの部下を使ってニューヨークからファルコを連れて来ると、彼に小さな手がかりを幾つか与え、劇的な再会ができるように仕向けた。更にファルコを使ってドルフを殺害させ、ドルフの財産までも独占しようと企んでいたのである。全てはイーシャの筋書きだった。それを知ったファルコは、イーシャに別れを告げる。イーシャは悲しそうな顔を浮かべると、1人で車に乗り、彼の元から離れていった。だがその直後、イーシャの車は爆発炎上した。ドルフが彼女の裏切りに気づいて爆弾を仕掛けたのか、はたまたイーシャがファルコと心中するつもりだったのか。真相を知る者はなく、ファルコはただ燃え盛る車を見つめ、茫然と佇むだけだった…。
「マザーズデー」「ブーイング・アドベンチャー ギャグ噴射家族」のチャールズ・カウフマン監督・脚本によるアクション・サスペンス。アクションシーンは村を破壊し尽くすクライマックスを筆頭に見応えがあるし、悲劇的ながら余韻のあるラストも良い。前の二作と同様に、手堅いつくりの作品だった。もちろんトロマ映画なので、本作にも下らないギャグは散見される。映画館の手すりにぶらさがって敵から隠れる場面では、だんだん辛くなって「アー」と声を上げるが、上映されているピンク映画のあえぎ声と被さって気づかれない。屋根の上を歩く場面では、突然屋根が崩れてゲイのカップルが愛し合っている現場に落下する。だがそんなおバカ要素は全てアクションシーンの合間の息抜きとして使われており、決してストーリーのハードな印象を損ねるように作用しない。チャールズ・カウフマンの絶妙なバランス感覚が、ここでも最大限に発揮されていた。一方で本作、中盤までファルコが状況に振り回されるばかりで、ストーリーの求心性が著しく弱いのはいただけなかった。その間ジャカルタにおける過去の話を同時進行させ、「かつてイーシャと何があったのか」で興味を持たせようとしているが、幾ら過去の状況を説明されても現代の話がなかなか進行しないのは、やはりもどかしく感じられてしまった。
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