悪魔の人間釣り               「評価 C」
ピーター少年は祖父と一緒に、湖畔に佇む別荘で休暇を過ごしていた。だがある時、ピーターの見ている前で、桟橋に立っていた祖父が何かに引きずられるように湖に転落。祖父は湖深くに沈み、そのまま浮上してくることはなかった。それから17年後、大学生になったピーターは別荘を相続し、友人たちを連れて久々に湖まで行ってみることにした。彼らの目的は、湖で毎年開催される釣り大会だ。多くの釣りキチが腕を競い合うこの大会に優勝すると、賞金として5000ドルもの大金が貰えるという。そこでみんなで参加し、賞金を狙おうというわけだ。別荘に到着するや否や道具を出し、大物を釣ることに躍起になる友人たち。ピーターも釣具店の主人ルッキーから新しい竿を買い、釣りに参加した。だが一方で、湖には不穏な影が蠢いていた。何者かが巨大なルアーを飛ばして人間釣りを行い、湖にいた人間を次々と手にかけていたのだ。やがて殺人鬼の魔の手はピーターの友人にまで及び、ピーターは真相の究明に動き出す。絶対音感をもつピーターは事件現場を転々とした結果、全ての現場において、同じ周波数の音が流れていたことに気づいた。犯人はこの周波数の音が原因で殺人を犯しているのではないか。しかし普通の人間が聴いても何てことの無い音なのに、犯人だけこの音が気になるということは、犯人は頭に何か埋め込まれた人物なのではないか。──と、ここまで推理を進めたところで、1人の人間の存在に行き当たった。釣具店の主人ルッキーだ。朝鮮戦争に従軍していた彼は、洗脳のために頭の中に鉄板を埋め込まれていた。この鉄板が一定の周波数に共振し、彼を発狂させているに違いない、とピーターは推理したのである。早速ピーターたちがルッキーの家を調べたところ、そこからは被害者たちが持っていた品々ばかりでなく、人肉のミンチとおぼしきものまで出てきた。ルッキーは殺した人間の死体をミンチにし、魚の餌にして処分していたらしい。かくして真犯人は確定したものの、その頃ルッキーはピーターの恋人アンを襲撃し、彼女の身柄を拘束していた。彼は自分の犯行がバレたことを悟り、アンを人質にとって、ピーターたちの動きを封じようとしたのだ。別荘に戻ったピーターはアンが連れ去られたことを知り、一計を案じた。彼はルッキーの家の側までボートを動かすと、彼が発狂する周波数の音を流し、家から誘き出した。すかさずルッキーは巨大ルアーを飛ばし、ピーターの腹部に引っ掛ける。だがピーターも負けじと、用意してきた巨大ルアーを放つ。ルアーはルッキーの首を貫き、あえなくルッキーは命を落とした。かくして釣り対決に勝利を収めたピーターは、アンを救出し、湖の平和を取り戻したのだった…。
広大な湖を舞台に釣りキチたちが血みどろの争いを繰り広げる、トロマ配給のフィッシング・スプラッター。本作の見所は何と言っても、邦題にもなっている人間釣りのシュールな光景だ。おばさんが桟橋に立っていると、何処からともなく巨大なルアーが飛んできて、おばさんの首に巻きつく。ルアーが引っ張られるとおばさんはその場でクルクル回転した後、湖の中に引きずり込まれるのだ。とても常人の頭では及びもつかないことを大真面目に映像化しており、観ていて爆笑するばかりだった。おまけに単体ですら十分インパクトのある人間釣りが、クライマックスになると主人公と殺人鬼との人間釣り勝負という形でパワーアップを遂げるとあっては、ただただ感服するより他ない。ここは「なんでピーターは無防備な格好で対決に行ったの?」なんて野暮なことは考えず、純粋にその面妖極まりない有様に感じ入るべきなのだろう。
さて本作、セールスポイントの人間釣りについては満足のいく出来だったが、その他の点に関しては決して褒められたものではなかった。ピーターの推理は行き当たりばったりもいいところで、事件現場に誰かの持ち物が落ちていると、「犯人はこの持ち主の○○に違いない!」と即断即決して警察に通報する──が、すぐに推理の間違いが発覚する、というポカを2回もやらかしてしまう。真相に辿りついた推理の際もプロセスが飛躍しすぎていて、どうにも腑に落ちない感じだった。そもそもこの映画、見せ場がそんなに多くないくせに尺が113分もあるので、本筋に関係の無い会話で間を持たせているシーンが随分あり、観ていてだれることこの上なかった。人間釣り目当てに鑑賞するにしても、長尺で相当な精神力を消耗することを覚悟しておいた方がいいだろう。
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