ロマンシング・マリーナ ドライ・マティーニは危険な香り    「評価 D」
パリ娘のエリザベスは海上をクルージング中、遠くで船が爆発するのを目撃した。何事かと思い近づいてみると、船に乗っていたと思しき男が浜辺に打ち上げられていた。男は既に虫の息で、「明日の夜10時、オイスター湾ピクニック岬、オリバー・ツイスト、50万ドル」とだけ告げると、静かに息を引き取った。翌日の夜、ピクニック岬付近の海上では、広告代理店で働くウォルターが“オリーブorツイスト号”という船に乗って、ドライ・マティーニの入ったグラスを片手に休暇を過ごしていた。だがそこへ、2人組のギャングが乗り込んできた。彼らはウォルターに「50万ドルを出せ」と要求するが、ウォルターは何も覚えがない。ギャングたちは船内を物色するものの、50万ドルが無いことが判明すると、速やかに退散していった。ウォルターは突拍子も無い出来事に首を傾げていると、今度はエリザベスが彼の船に乗り込んできた。彼女はウォルターに昨日の出来事を話し、“オリバー・ツイスト”はこの船のことではないのかと訊ねる。ウォルターは本当に身に覚えがなかったが、しばらく考えた末、1つの推論に辿りついた。“オリバー・ツイスト”とは爆発した船に乗っていた男の名前で、オリバーは今日この海上で、50万ドルをギャングたちに引き渡す予定だったのではないか、と。ならば船の沈没した海底には、50万ドルが沈んでいるかもしれない。そこでウォルターとエリザベスは、船の沈没地点へ赴き、サルベージをしてみた。するとウォルターの推理はドンピシャリ。見事に50万ドルの入った箱を発見したのである。2人は高級ホテルに宿泊し、お互いの幸福を祝福する。だがこれでめでたしめでたしといくほど、世の中は甘くない。昨日のギャングたちが、ウォルターのことを密かに追っていたのだ。ホテルで、列車で、度々襲撃してくるギャングを、華麗にかわしていくウォルターとエリザベス。しかしボートに乗って海上に逃げようとしていたところで銃を突きつけられ、とうとう2人は窮地に立たされてしまった…。
50万ドルを巡るギャングとの攻防をコミカルに描いた、トロマ産のロマンシング・アドベンチャー。「シャレード」みたいなお洒落なサスペンスを狙った作風で、マティーニ片手のクルージングや高級ホテル内のパーティーといった優雅なモチーフが盛り込まれ、また作中にはユーモアがふんだんに織り込まれている。だがそこはトロマ映画。クルージングもパーティーも画面に映る範囲が狭すぎて安っぽさが漂うし、ユーモアの方も、ギャングが部屋を間違えてサプライズパーティーの会場に入って馬鹿騒ぎに巻き込まれたり、戦いのとばっちりを受けた男たちが裸で街を走り回ったり、上品さの欠片もないものばかりで、ある意味安心させてくれた。またギャングの追撃から逃げるという、本来なら手に汗握るシーンでは、明るいアップテンポな曲が流れてヘナヘナな気分にさせてくれるし、クライマックスのどんでん返しも伏線を何度も強調するものだから驚きもへったくれもない。サスペンスとしては欠陥品もいいところだが、その腑抜けた雰囲気に「ああ、トロマだなあ」と、しみじみした心持ちにさせてくれる作品だった。
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