熱愛大戦争 スタック・オン・ユー!      「評価 C」
いつの時代も男女のいざこざは絶えぬもの。アメリカのとある裁判所においても、ビルとキャロルのカップルが同棲を解消し、公平な財産分配をするために法廷に立っていた。しかしあまりに両者が激しく罵りあうものだから裁判は一向に進まず、堪りかねた裁判官は一旦休廷し、2人から改めてこれまでの経緯を伺うことにした。ビルとキャロルが出会ったのは3年前。養鶏場で働くビルが、キャロルの働く法律事務所へ、フライドチキンと間違えて大量のニワトリを持ってきたことが馴れ初めだった。2人は互いに惹かれあい、すぐに同棲を開始した。ダンスを踊ったりボディペインティングをしたりと楽しい日々を送っていたが、時の流れというものは残酷なもので、やがて2人の関係には亀裂が生じるようになった。キャロルはビルが物を食べる音が気に入らず、ビルは自分の髭剃りで腋毛を剃るキャロルのことが気に入らない。またこの当時、ビルは養鶏場で失敗続きで、とうとう社長からクビを言い渡されてしまった。それを境に2人の溝はますます広がっていく。そんなある日ビルは、キャロルがカフェテラスで見知らぬ男性と親しげに会話しているのを目撃。彼女に疑念の目を向けたビルは、正体がばれぬようにピエロの格好をして、彼女を尾行し始めた。だが彼女の同僚の葬式現場にもピエロの格好で出現し、式を滅茶苦茶にしたことで、完全にキャロルの怒りを買い、同棲していた家からも追い出されてしまった。それから2人は、互いのことを忘れるために新しいパートナーを見つけようとするが、ビルが出会うのはSMプレイ大好きな変態女で、キャロルが出会うのは金目当てのセールスマンやレズビアンばかりで、どうにも上手く行かないのだという。その話を聞いた裁判官は、ひとまず2人をそれぞれの住まいへと帰した。するとその日の夜、不思議なことに、2人は同じ夢を見た。夢の中で、2人は法廷に立たされていた。歴史上の恋愛に失敗した偉人たちが陪審員として見守る中、昼間の裁判官から「愛を殺した罪」で裁かれていたのである。だがそこに呼び出された証人たちが告げる真実は、互いを軽蔑していた2人にとって、あまりにも衝撃的なものだった。ビルは仕事上のミスで会社をクビになったとキャロルに説明していたが、本当は社長からキャロルのことを侮辱され、社長を殴ったことでクビにされたのだという。キャロルがカフェテラスで会っていた男は、実はキャロルの兄のランスで、ビルとの関係を修復するための相談に乗っていたのだという。両者の断絶は、完全な誤解によるものだったのだ。それを知った2人は夢から覚めた後、すぐさまお互いを求めて家を飛び出し、路上で激しく抱き合った。するとその近くでは、裁判官が天使の格好をして2人の様子を見守っていた。彼の正体は謹慎中のダメ天使ガブリエルで、神からの命令で男女のいざこざを解消する手助けをしていたのだ…。
ロイド・カウフマン&マイケル・ハーツのコンビが、男女の諍いをテーマに製作したラブコメディ。「仲たがいしていた2人の関係を天使がとりもってくれる」なんて実にファンシー&メルヘンなプロットだが、そこはトロマ映画なので、当然のごとく下らなすぎるにも程があるネタに溢れた凄まじい内容だった。冒頭の法廷における乱闘シーンからして何故かチアリーダーが応援している有様だし、2人を宥めるために裁判官が語る歴史上のカップルについてのエピソードときたら、原始人は車輪を動かす研究をしていたら『穴のあるところに棒を突っ込むものだ』と発見したとか、アダムとイブが出会ったエデンの園では動物たちが淫交三昧(着ぐるみのブタとフクロウがセックスしている!)だとか、素晴らしくひどいものばかり。中でも本作において逸品なのが、養鶏場で働くビルが、ニワトリにより多くのタマゴを産ませるために考案した数々の珍アイディアだ。最初に出てくるアイディアは、“ディープ・クラック”というタイトルのニワトリ用AV(ドレスで着飾った2人のニワトリがベッドでセックスしたりSMプレイに及んだりする!)を養鶏場で流し、ニワトリを興奮させてタマゴをどんどん産ませるというもの。これは上手く行き、発情したニワトリたちはマシンガンのごとくタマゴを乱射したが、あまりに勢いよく出すぎた無数の卵は社長の全身に降りかかり、タマゴまみれになった社長の怒りを買ってしまう。この失敗を挽回するべく、次に考案したのが産卵誘発機なる怪しげな機械。ニワトリをこれに入れると1日3個もの卵を産ませることが可能という代物で、早速ビルは社長が止めるのも聞かず、社長お気に入りのニワトリを機械に放り込んでテストを開始した。するとタマゴが2つ立て続けに飛び出したまでは良かったが、次に出てきたのがモモ肉のフライドチキン。青ざめる一同を余所に、機械からは更にムネ肉のチキンやマッシュポテト、そして大量の骨が飛び出し、彼のアイディアは大失敗に終わってしまうのだ。こんな馬鹿馬鹿しいネタのオンパレードで満足させてくれる本作だが、あまりにも大量のネタを詰め込もうとしてなのか、途中途中に脈絡のなさすぎるネタが幾つも見られ、映画のテンポを悪くしていたのは気になった。
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