マイ・クレージー・アメリカ            「評価 D」
ニューヨークで暮らすおバカな青年アバークロンビーは、ひたすらに不幸で報われない日々を過ごしていた。横断歩道を渡ろうとする老婆の傘を持ってあげようとすると、老婆から強盗扱いされて叩かれる。道で車にひかれたら、ひいた側は「車に傷をつけた」とアバークロンビーに因縁をつけてくる。会社に遅刻すると、他の遅刻した社員はお構いなしなのにアバークロンビーだけ執拗に責められる。意中の女性ルーシーは彼のことを蔑み、まるで相手にしてくれない。そんな彼はある日、タイミングが合わずなかなかエレベーターに乗ることができなかったことから、会社をクビになってしまう。新しい就職先では「橋に塗装の目印となるテープを貼る仕事」を与えられるも、貼ったそばから通りすがりの女の子に1つ残らずはがされ、またもやクビに。誰からも好かれず相手にされないことを精神科に相談に行っても「おまえなんか助ける価値も無い」と見放されて叩き出され、立ち寄ったコーヒーショップでも客として扱われない。ふとしたことから路上で座禅を組んでいたヒッピーと知り合い、彼らの会合でドラックを吸って親睦を深め合おうとしても、すぐに警察が踏み込んできてアバークロンビー以外の全員が逮捕され、一人ぼっちに。何をやっても幸せが訪れないアバークロンビー。彼はやがて、自分の存在を戦場の兵士に重ね合わせるようになった…。
「悪魔の毒々モンスター」ロイド・カウフマンが、マイケル・ハーツと組む前に監督した71年の作品。一応ジャンル上はコメディであり、作中の随所にチャップリンやキートン作品を彷彿とさせる喜劇的演出が散りばめられているものの、ストーリーそのものは何とも救いようのないもので、観ていて気が滅入ってきてしょうがなかった。報われない男の描写にはウディ・アレンからの影響が窺えるが、本作におけるアバークロンビーの虐め方はウディ・アレン作品のそれを更に辛辣にしたような容赦のなさで、最早ブラックユーモアとして笑って済ませる範囲を逸脱している。どうやらこの頃のロイド・カウフマンはまだ、ユーモアのバランス感覚が身についていなかったようだ。ロイド・カウフマンの初監督作品であり、トロマの歴史を知る意味でも、トロマファンなら見ておいて損はないが、それ以外の真っ当な人間にはおススメできない作品である。
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