残酷の人獣 「評価 C」
貨物船の船員フィッツジェラルドは、船が難破して漂流した果て、ペルー沖の“血の島”へと辿りついた。ここでは生物学者のジラードが小さな研究所を構えており、その地下には包帯に覆われた生物が幽閉されていた。この生物は人間そっくりな体型をしていたが、両耳が人間のそれよりも遥か上に位置しており、その頭の形はまるで猫のよう。ジラードは人類に代わる地上の支配者を創造するべく、豹を人間そっくりに改造する研究に勤しんでいたのだ。しかしこの豹人間、相当な凶暴性を秘めており、たびたび研究所を脱走しては島の人間を襲っていた。やがて豹人間はジラードたちにも牙を剥き、島を名前どおり血に染めていく。フィッツジェラルドたちは、何とか豹人間の魔の手から身を守ろうとするが…。
H.G.ウェルズの「モロー博士の島」を原案とし、「女体拷問鬼看守パム」のジェラルド・デ・レオン監督が作り上げたフィリピン産怪奇映画。冒頭に「本作には非常にショッキングなシーンがあります。心臓の弱い方は、映画の途中でベルが鳴りましたら目を閉じてください。もう一度ベルが鳴りましたら目を開けて大丈夫です」なんて御大層なナレーションが流れるのが、何とも70年代の東宝東和チック。肝心のベルが鳴るショックシーンは「メスで豹人間の皮膚を切開する」という、それ単体で見ると59年という製作年度を考えても全然大したことの無いレベルの代物だ。しかし本作における他の恐怖シーンがムード重視の演出のため、唯一直接的な表現がされる当シーンが一層ショッキングに見えるのを本作の製作側は懸念したのだろうか。
本作に出てくる豹人間はどうやら全身のスーツを作っていないらしく、頭部と手のパーツ以外は全て包帯を巻いて済ませているのが少々残念。でも猫を模したうめき声が哀愁を感じさせ、メロドラマなストーリー内容と相俟って、悲劇の怪物としての魅力を否が応に増していたのは好印象だった。
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