香港人肉厨房             「評価 C」
事件は、とある写真店に持ち込まれたフィルム缶から始まった。店主が現像をしたところ、それに記録されていたのは、女性の死体や幼女の裸といったおぞましい光景ばかり。店主の通報を受け、リー刑事たちが出動し、写真を受け取りに来た1人の男を拘束した。男の名はラム・ゴウユ。父親や妹一家と同居する、無口なタクシー運転手だった。ラムは警察の取調べを受け、写真は全て自分が撮ったものであると自供した。彼は幼い頃に実の母親と生き別れになってからというもの、醜い姿を晒す女性に対して、異様なまでの偏執を抱いていた。そのためタクシーに乗った女性客が嘔吐でもしようものなら、たちまち憤怒して女性を絞殺。死体を解体し、その様子をカメラに収めていたのだ…。
「八仙飯店之人肉饅頭」から始まって「人肉天婦羅」「香港人肉厨房」「香港人肉竹輪」と続いた、アルバトロス発・香港実録猟奇犯罪シリーズの第三弾。本作も「人肉天婦羅」「香港人肉竹輪」と同様にカニバリズム描写は皆無で、邦題に「人肉」と付けるのは無理があるように感じられた。そんな本作の目玉は、ラムの変態殺人鬼ぶりである。殺害方法こそ終始一貫して絞殺だったが、この男の異常なところは死体の処分方法にある。最初は死体を隠すことを第一に考え、電動ノコギリで乱暴に解体していたのが、次第に解剖学の本を買ったり、メスで乳房を切り取ったりと、「死体を丁寧に扱おう」という方向にエスカレートしていく。そして終いには、死体に対する愛情が爆発し、死体に化粧を施して死姦プレイに励む様子を、嬉々とビデオカメラに収めるようになるのだ。取調べに入るまでの過程がやや冗長だし、ラムが最後まで警察側に屈した姿勢を見せないのでカタルシスに欠けているし、欠点も少なくないのだが、それでもラムの死体への愛情の変遷はなかなかに見応えがあり、魅力を感じさせてくれる映画だった。
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