クモ男の復讐 「評価 A」
生化学研究所の警備員をしているクエンティンは、「クモ男の復讐」というコミックに夢中になっていた。超人的なパワーで悪を蹴散らすクモ男の姿に憧れ、日ごろからクモ男のような力が欲しいと考えていたのだ。そんなある日、クエンティンがいつものように警備の仕事をしていると、強盗が研究所に押し入ってきた。強盗はすぐに逃げ去ったものの、襲われた同僚の警備員が命を落とし、クエンティンは自分の無力さを嘆いた。だがその時、彼はふと、研究室に備え付けられていた蜘蛛の遺伝子を抽出する機械に目を留めた。もし自分の体に蜘蛛の遺伝子を注入したら、クモ男のようなスーパーヒーローになれるかもしれない。そこでクエンティンは意を決し、自分の腕にクモの遺伝子を注入したのである。すると翌日、彼の肉体には超人的なパワーが備わっていた。早速その力で町を騒がせていた殺人鬼を撃退し、彼は自分の目論見が当たっていたと大喜びする。ところが、世の中はそう甘くはなかった。あまりにも強大すぎるパワーは彼の制御できるものではなく、たびたび町でトラブルを起こすように。外見はおぞましいクリーチャーへと変質していき、心の奥底からは、人間を食らいたい欲求が込み上げてくる。クエンティンはクモ男の力を手に入れたことで、破滅への階段を転がり落ちていったのだ…。
「魔界覇王」「怪奇異星物体」「人喰い人魚伝説」「獣人繁殖」と共に、サミュエル・Z・アーコフの「クリチャー・フィーチャーズ」シリーズの1本であるTVムービー。本作の原題「EARTH VS. THE SPIDER」は、バート・I・ゴードンの巨大蜘蛛映画「吸血原子蜘蛛」と同じであるが、内容の方は「スパイダーマン」のバッドエンド版とも言うべきSFホラーだった。過ぎた力を手に入れたせいで傲慢になり、本来の自我との葛藤に苦しみながら外界と隔絶し、やがて自らの欲求を晴らすために悪事に手を染め、身も心も怪物に変わり果てていく──と、ヒーローになろうとした男の末路をこれでもかと言う位に残酷に描いており、観ていて実に痛々しかった。怪物化したクエンティンの姿も、背中から6本の足が伸びているので足が10本になっているのは気になったが、容赦ない程に醜悪で、作品の悲劇性を高めるのに一役買っている。苦悩するヒーローモノが好きならば、物凄く心に染み入るものがある作品だった。
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