人喰い人魚伝説 「評価 C」
1905年、興行師アンガスは仲間たちと共に、アイルランドで見世物小屋を開いていた。小屋で公開されるゾンビや人魚は全て役者が演じている偽者だったが、どういうわけか客の中に、見世物の人魚に対して異様に関心を示す老人がいた。アンガスたちはウーリッチと名乗るその老人の家に来てみると、驚愕すべきものを目の当たりにする。家の一室では、本物の人魚が、水槽の中に閉じ込められていたのである。彼は妻を人魚に喰い殺され、その復讐のために生け捕りにし、自宅に飾っていたらしい。そうと知ったアンガスは、本物の人魚を見世物にすれば大金を稼げると踏んで、ウーリッチから人魚を譲り受けようと交渉に出た。ところが交渉は決裂したばかりか、揉み合いになった末、ウーリッチを殺害してしまう。慌てたアンガスたちだったが、ウーリッチが1人暮らしなので殺害の発覚まで時間が掛かるのをいいことに、速やかに死体を処分し、人魚を奪い取った。その後、一行は興行の場をアメリカに移すため、船に乗ってアイルランドを後にした。人魚の入った水槽を船室に積み込んで。だがこの人魚には、人の心を操る恐るべき力があった。度々力を駆使しては水槽を抜け出し、船員たちを次々と食い殺していったのだ。しかし、尚も人魚の価値を重視したアンガスは、決して人魚を処分しようとはせず、逃げ出すたびに水槽の中へと戻すだけだった。人魚が超能力で船の針路を操作し、仲間たちの棲家に誘導していることなど、露と知らずに…。
「魔界覇王」「怪奇異星物体」「獣人繁殖」「クモ男の復讐」と同じく、サミュエル・Z・アーコフの「クリチャー・フィーチャーズ」シリーズの1本であるTVムービー。「SHE CREATURE」という原題こそエドワード・L・カーン監督の「海獣の霊を呼ぶ女」と同じだが、例によって例のごとく本作の内容は「海獣の霊を呼ぶ女」とは完全に別物。洋上の船を舞台に、人魚が男どもをバリバリ食いまくる魚類モンスター映画となっていたのだ。美しい人魚が口の周りを血で染めながら人肉を貪る様子は、それだけでインパクト抜群だったが、加えて映画のクライマックスにおいては、全身に巨大なヒレやトゲがついた醜悪な真の姿を披露するというオマケ付き。こと怪物のビジュアル的な魅力においては、なかなかのものだった。しかし本作、人魚が超能力を使えるという設定がうまく活用できていないのは気になった。人魚は言葉を発しないので「人魚がどこまで人間を操っているのか」がいまいち不明瞭になっているし、見世物小屋で人魚を演じていた女優リリーと心を通わせる描写も、ストーリー上重きを置かれていた割には、リリー本人が感じていた謎に対してろくな解答が提示されず、中途半端に終わった印象だった。
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