魔界覇王             「評価 B」
コンピュロム社はこのたび、新作アクションゲーム「魔界覇王」の製作に取り組んでいた。しかし納期の一ヶ月前にテストプレイを実施したところ、「モンスターがショボい」「全然怖くない」とプレイヤーたちからはブーイングの嵐。そこで会社はゲームのクオリティアップを図るべく、これまで携わってきたプログラマーたちを解雇し、新たにハードコア、バグ、ソルの3人のスタッフを雇い入れた。「一番優秀な仕事をした者には100万ドル」という条件に目を輝かせた彼らは、一ヶ月後の納期に向けて急ピッチでモンスターや音楽の作り直しを行っていく。そして三週間後、いよいよ完成が間近になったところで、事件は起こった。突然の落雷にメインフレームがやられ、これまでのデータが損失してしまったのだ。幸いバックアップをとっていたのでデータの復旧自体はすぐにできたのだが、落雷はゲームに予想外の変異をもたらしていた。モーションキャプチャーに使用したスーツが、ゲーム内のモンスターの動きにリンクして動き出すようになったのである。モンスターがプレイヤーを殺すと、スーツがそれに連動してスタッフを殺害していく。かくして戦場だったゲーム会社の制作室は、言葉通りの戦場へと変わり果てたのだ…。
サミュエル・Z・アーコフという映画プロデューサーがいる。50〜70年代にかけて、ロジャー・コーマン、バート・I・ゴードン、ケビン・コナーといった、B級モンスター映画界の大御所たちと手を組んで、数多くのモンスター映画を世に送り出してきた男だ。そんな彼が2000〜2001年にかけて、50年代に自らプロデュースした5本のモンスター映画を、息子のルー・アーコフと共にTVムービーとしてリメイクした(と言っても元の作品と同じなのは原題だけで、中身は全然別物なんだが)。それが「魔界覇王」「怪奇異星物体」「人喰い人魚伝説」「獣人繁殖」「クモ男の復讐」の5本から成る、「クリチャー・フィーチャーズ」シリーズである。53年の「怪物を造る男」のリメイクである本作は、モーションキャプチャー技術を利用することで「ゲームの怪物が現実世界に襲い掛かる」というシチュエーションを作り上げている点がユニーク。最初は単なるモーションキャプチャー用のスーツだったのが、死体のパーツに無数のコードを接続して自らの肉体として取り込み、徐々にゲームのモンスターと同じ姿に変貌していくのも面白い演出だった。また「過激なゲームを作ることに長けたスタッフが生み出したモンスター」という設定のためか、本作のモンスターは、人間の首を脊髄ごと引っこ抜いたり、生首や足を部屋の至る所に散らかしたりと、物凄く過激な活躍を見せてくれたのも魅力的。爆発にも耐えたはずのスーツが、あまりにもしょうもない方法で倒されたのは拍子抜けだったが、見習いスタッフを中心にしたストーリーもちゃんとまとまっているし、良作と言える内容だった。
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