炎の勇者たち ニンジャ・ハンター       「評価 A」
王朝時代の中国。陰陽を取り入れた拳法"武当”の師範である白眉道人は、武当による拳法界の支配を企んでいた。そこで彼は、忍者帝国を築くために中国に来たという伊賀忍者たちと協力し、長年の宿敵である少林寺に襲撃をかけた。少林寺で修行を積む兄弟、ルンとハンによる懸命な抵抗も空しく、少林寺は壊滅。怒りに燃えたルンは単身白眉道人に戦いを挑んだが、肉体を鋼鉄のように硬質化させる白眉道人の技を前に、敢え無く命を落としてしまった。それから10年後、中国拳法界は完全に武当と伊賀忍者の支配下となっていた。しかし辛くも逃げ延びていたハンは、2人の息子マンとオーに修行を課し、一人前の拳法家に育て上げていた。やがてルンの娘リンも彼らに合流し、若き拳法家たちは白眉道人の鋼鉄の肉体を打ち破るべく、少林寺秘伝の拳法"乾坤指”の習得に励むのだった。だがそんな中、少林寺の生き残りがいるという話が、白眉道人らの耳に届いてしまう。早速白眉道人は伊賀忍者たちを率いて、ハンたちの隠れ家へと向かった…。
「少林寺vs忍者」「忍者vs阿羅漢 遥かなる王道」など、ニンジャとカンフーの激突を描いた映画は幾つか存在するが、本作はそれらの中でもかなり傑出した出来と言えるだろう。何せ本作、ニンジャとカンフーの両方の描写について満足できる、非常に充実感に溢れた内容だったのだ。
まずお約束のトンデモ日本描写だが、本作の伊賀忍者たちは、他所様の土地に来て勝手に帝国を築こうとしているという設定だけでも十分に笑えるのに、「どうしてこの国の人々は我々を迫害するんだろうか」と悩みを吐露し、自分たちのしている行為にまるで自覚が無いことが判明して一層爆笑させてくれた。忍者の頭領たちの普段の格好が、和服にチョンマゲ頭だけでは物足りなかったようで、わざわざ「忍」と書かれた鉢巻まで付けてニンジャをアピールしているところもポイントが高かった。
その一方でニンジャたちの戦い方は割と現実に即したものとなっており、手裏剣や刀、煙玉といった定番アイテムで戦う他、鏡のついた笠を使って相手の目をくらませて攻撃するという、とてもニンジャらしい卑怯な戦法まで披露しており、ニンジャ好きとしては実に好感が持てた。伊賀忍者の頭領による2つの金環を自在に操るアクションも、あまりニンジャらしくないとは言えキレのある動きで魅せてくれ、見応え十分だ。
そしてカンフーの方も、摩訶不思議かつ奇想天外な拳法のオンパレードで負けていない。白眉道人の拳法は肉体を硬質化させるだけでなく、体温を急上昇させて遠くの物を燃やすことができるという壮絶なものだ。それに立ち向かうマンとオーは指拳で相手の体を貫くことを得意としており、伊賀忍者の里における戦いではニンジャたちの体を次々と貫いて大量出血のクリアランスセールを巻き起こしていた。更に白眉道人との最終決戦では、それまで全く修行している描写のなかったリンまでもが戦いに参加し、指拳を口の中に突き入れられた道人が血を噴水のように吐き出すという、実にシュールな光景が用意されていたから堪らない。他にも全身に毒を浴びた拳法家との戦いや、白眉道人が手刀でリンの服を切り裂くなんてセクハラ行為を働く場面など、カンフーもニンジャに負けじ劣らじと見所が満載で楽しませてくれた。
皇帝の周りの人物が10年後にはさっぱり出てこなくなったり、フィルマーク社お得意の「戦い終わったら即エンドクレジット」のおかげで余韻もへったくれも無かったりと、欠点もそれなりにあるのだが、それを差し引いても尚、余りあるほどの強烈なエネルギーを感じさせてくれる作品だった。
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