バグズ(別題:バグズ・パニック)      「評価 D」
建設中の地下鉄トンネルにて、凄惨な殺人事件が発生した。被害者は頭と両足を切断され、見るも無惨な有様。だが辺りには凶器らしきものがまるで見当たらず、犯人の手がかりとなるのは遺体に付着していた、昆虫の消化液に似た液体だけだった。そこで事件を捜査していたFBIのマットは、知り合いの昆虫学者エミリーに検死を依頼した。彼女が遺体を視たところ、犯人は巨大な昆虫ではないか、との答えが返ってきた。マットはその推測の真偽を確かめるべく、特殊部隊を動員して地下鉄を調べようとした。ところが、トンネルを建設しているペトロノビッチ社の社長は調査に猛反対し、許可を下さなかった。トンネルに変な生物がいると判明したら、会社は大打撃を負うからだ。しかしその直後、投資家たちを招いて、地下鉄が途中まで完成した記念パーティーを車両内で行っていたところ、車両に巨大昆虫が侵入。パーティーの参加者が全員食い殺されるという最悪の結末となった。この事件により、会社もトンネルの調査を承認。かくしてマットとエミリー、そして特殊部隊の面々は、巨大昆虫たちが蠢くトンネルへと足を踏み入れた…。
「クイーン・スパイダー」のデレク・ラパポート製作によるSFアクション映画。本作の巨大昆虫は、最初はサソリのような姿をしており、尻尾の針や鋭利なハサミを駆使して人間に襲い掛かる。ところがこれはまだ幼虫で、映画後半になるとその内の一体が羽化。なんとトンボのような姿になって、飛び回りながら尻尾の針で攻撃してくるのだ。サソリが主役のパニック映画は「黒い蠍」や「エア・スコーピオン」「ギガンテス」など数多くあるが、トンボが主役のパニック映画となると世の中広しと言えど、本作ぐらいのものだろう。そんな珍しい巨大トンボであるが、残念ながら戦闘の舞台が悪かった。屋外ならともかく、狭い地下トンネルの中では飛べるというアドバンテージも大した役に立たず、ろくな見せ場もないままに呆気なく倒されてしまったのである。そもそもサソリの時にはハサミと針の2つあった武器が、トンボになったら針だけになり、明らかに弱体化していたのは気の毒というものだろう。また本作、戦闘シーンも厳しい出来だった。いくら主人公側が銃を撃っていても、殆どの戦闘シーンでは昆虫側に着弾描写がないため、効いているのか効いてないのか判別できなかったのだ。そのくせ、「高圧電流を流した金網を設置して昆虫を一掃する作戦を実施→金網のすぐ近くで、向こう側の昆虫を撃ちまくる隊員→金網が倒れる→隊員は感電死」といった、お間抜け真っ盛りな珍場面はきっちり用意しているものだから、戦闘シーンは著しく緊迫感に欠け、それほど盛り上がることはできなかったのである。ただこの映画、車両内のパーティーにおける惨劇の後、車両が駅に着き、ドアが開くと、中では地獄絵図が広がっている──という一連の流れは素晴らしかった。
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