ドール・ハウス           「評価 C」
メキシコのアパラ市には、古代民族サンジアの遺跡があった。考古学者がこの遺跡を調査していたところ、急に石室の扉が倒れ、学者は圧死。石室からは1つの霊魂が出てきて、何処へと飛んでいってしまった。翌週、遺跡付近のオモチャ工場を買い取ったエリオットは、家族を連れてロスから引っ越してきた。オモチャ工場の中には前の持ち主が作ったらしい少女人形が何体か置いてあり、エリオットはその一体を娘ジェシカに与えた。ジェシカは人形にドーリーと名づけ、家の庭に備えつけられていたドール・ハウスで一緒に遊んでいた。ところがやがて、ジェシカに異変が見られるようになった。修道士の祈りの言葉を聴いて喚き出したり、古代民族の言葉を話したり、夜遅くになってもドーリーと遊んだり。母マリリンは娘の変化に戸惑いの言葉を漏らすが、エリオットは仕事に忙しく、聞く耳をもってくれない。そしてある晩、とうとう事件が起こった。地下倉庫に入った家政婦に、ドーリーがハサミを持って襲い掛かってきたのだ。サンジアが信仰していた、山羊の頭をした悪魔の子。その悪しき魂が遺跡の発掘調査により解き放たれ、ドーリーを始めとする人形たちに憑依していたのである…。
「マッド・ティース」「悪魔の改造人間」のピエール・デヴィッド製作総指揮によるオカルトホラー。設定だけを見るとまんま「チャイルド・プレイ」の少女&複数版といった感じだが、邦題にもなっているドール・ハウスの存在が、本作と「チャイルド・プレイ」を差別化する大きなキーポイントとなっていた。ドール・ハウスという大人の入り込めない空間で、ジェシカとドーリーが2人きりで遊ぶ。その間にドーリーはジェシカを洗脳し、終いには「親を殺せ」という命令を聞き入れるまで従順な存在に変えてしまう。すなわちこの映画は、子供が人形に感じる潜在的な恐怖を映像化した「チャイルド・プレイ」とは違い、大人が目の届かない場所で子供を遊ばせることへの恐怖を映像化した内容だったのだ。
しかしこのようなコンセプトを設けていながら、本作はそれを活かしきれているとは言い難かった。ジェシカが変貌するまでの過程が若干端折り気味だし、洗脳されたジェシカと親との対決も早目に片付けられ、クライマックスの人形軍団との決戦が消化試合のように感じられたのだ。また殺害シーンについても、「貯水池に落として電球を入れて感電死」はまだいいのだが、「ミシンで手を縫ったら心臓発作で死亡」というのは画的に非常に地味で、カタルシスに乏しい。本家チャッキー並みに表情豊かなドーリーの造形や、洗脳された娘が母親を殴りまくる場面など、見るべき点も多いのだが、全体的には中途半端な印象のする作品だった。
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