ラヴ・ゴッド 「評価 B」
1996年。ニューヨーク州立精神病院は予算削減のため、3分の1の患者を強制退院させるというトンでもない決定を下した。おかげでニューヨークは頭のイカれた人間でごった返し、たちまち欲望と暴力にまみれた狂気の都へと変貌を遂げたのである。青年ラルーもまた、文章を読んでは破り捨てたい衝動に襲われる"強迫観念読書症候群”の患者でありながら、ノグチ所長の独断によって強制的に退院させられ、スラム街のボロアパートで暮らすこととなった。近所には、ひどい潔癖症の未亡人コニーや、覆面被って暴れないと気が済まないビクターなど、ラルーを振り回す精神病患者が何人も住んでいたが、そんな中でコニーの娘ヘレンだけは、ラルーに対して優しく接してくれた。2人は互いに惹かれあい、愛を育む日々を送る。しかしその頃、ニューヨークでは1つの事件が起きていた。ノグチ所長が取り寄せた寄生虫"T−サイクロプタス”が、搬送中に逃亡し、下水道の奥底へと姿を消した。やがてT−サイクロプタスは人間に寄生し、巨大な女性器を象ったモンスター"ラヴ・ゴッド”に変態。下水道を動き回り、本能の赴くままに宝石を奪い、人間を殺し始めた。ラヴ・ゴッドの出現によってニューヨーク中が混乱に陥る一方で、ラルーの身にも異変が訪れる。彼は自分を正常と思うあまり、病院から処方された薬を飲まずに暮らし続けた結果、その精神は崩壊の一途を辿ったのである。ラルーとラヴ・ゴッド。最高にサイケな状態の両者はやがて対峙し、互いの本能に促されて激突するのだった…。
まんま陰唇なデザインの怪物と精神病患者たちの血みどろの争いを描いた、クレイジーここに極まれりな内容のモンスターパニック映画。まるでクローネンバーグ作品のグロテスクな部分を限界ギリギリまで引き伸ばしたかのような壮絶さで、観ていて嘔吐したくなる要素がてんこ盛りだった。ラヴ・ゴッドを始めとするクリーチャーたちのおぞましいデザインに加えて、グラグラ揺れまくるカメラワーク、随所に盛り込まれる原色だらけのトリップシーン、登場人物たちの常軌を逸した言動の数々──などの気持ち悪くなる要素が、常に二重にも三重にも積み重なった状態で映像を形成しており、最後まで観終わった時には重度の酩酊状態へと陥ってしまうのだ。また、作中に何度も出てくる説明文をラルーが事細かに読み上げていることが象徴するように、徹底して精神病患者たちの視点から物語を追うのに執心していることが、作品の異様な雰囲気を増幅している点も見逃せない。まさしく変態と呼ぶにふさわしい、素晴らしいまでに醜悪な作品だった。
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