火星人(なにか)が地球にやって来る      「評価 D」
地球の生命体の管理をしていた火星人たちが、一千万年ぶりに地球にやってきた。ところがハリウッドに降り立った彼らが最初に遭遇した生物は、薄汚いホームレス。その不潔な暮らしぶりを目の当たりにした火星人たちは、地球の生物がろくな進化をしなかったと悟り、進化の軌道修正のために新たなる生物を生み出した。その生物とは、人間並みの知能をもつ掃除機だ。こいつは人間と同程度の性欲をもっており、人間の女とセックスすることで、掃除機人間"バキュサピエン”を孕ませることができたのだ。これで地球の生命体も綺麗好きになる、と確信した火星人たちは、UFOに乗って地球を後にした。ところが、彼らには重大な誤算があった。彼らがハリウッドに置いていった掃除機は、性別が男でありながら、ムラムラしたら男女問わず交わり合うバイセクシャルだったのである。ホームレスの中年バーノン、スケベ男トム、セクシーなロック歌手リナ、と次々相手を変えてセックスしまくる掃除機によって、ハリウッドは小規模な混乱に陥る。そんな中、バーノンは同性でありながら掃除機に惚れ込んでしまった。掃除機の方もバーノンを愛するようになり、2人は幸せな生活を送るように。だが掃除機は、トムの妻を撲殺したり多くの人間をレイプした罪で警察に追われていた。やがて殺人課のクレイン警部補に見つかり、とうとう2人の仲は引き裂かれることとなったのだ…。
火星人の思惑により人間をレイプするようになった掃除機の波乱万丈の生涯を綴った、ダウナー系SFコメディ映画。まず目を引くのがチープさ全開な特撮で、初っ端から粘土で作られた不細工な火星人たちが雑なストップモーションアニメでカクカク動く様子を見せつけられるから凄まじい。火星人がフェードアウトした後も、本作の主人公たる掃除機が、欲情した相手に駆け寄ったり、コードを投げ縄のように飛ばして首を絞めたり、吸引ホースでトムの尻の穴をボーリングしたり、コードを手のように使ってピザを食べたり──と様々な行動をとる度に、滑らかさ0なストップモーション撮影が存分に使用されており、観ていて強烈な眩暈動悸息切れに襲われること甚だしかった。特撮がこんなものだから造形については言わずもがな。火星人たちのUFOはホームメイド感に溢れた心温まる代物だし、作品後半に誕生するバキュサピエンは、赤ん坊の人形の胴体をエアクリーナーに挿げ替えただけという、実にお手軽かつ不気味なデザインで戦慄させてくれた。そして脚本の方もストーリーがすこぶる散漫でテンポが悪く、監督自ら作曲している音楽についても、ノリのいい曲が揃っているのに場違いな場面でばかり流されて上手く活用できているとは言い難かった。このように総じて評価できるような出来ではないのだが、内に秘めたインパクトだけは強烈なので、一度観たら忘れたくても忘れられないという、何とも恐るべき作品だった。
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