猟獣人ヒューモンガス 「評価 D」
青年エリックは弟ニック、妹カーラ、そしてガールフレンドのサンディやドナと一緒に、休日がてらに南の海でクルージングを楽しんでいた。道中で一行は、故障したボートに乗って漂流中の男バートを発見し、彼を救助した。何でもバートの話によれば、この付近にはドッグ・アイランドという、人間嫌いの老婆が無数の猛犬と暮らしている危険な島があるそうだ。島の話を聞いて恐れをなすエリックたちだったが、その日の晩、弟ニックの悪ふざけをエリックが止めようとして取っ組み合いになった挙句、クルーザーは炎上。彼らは海に飛び込み、たちまちドッグ・アイランドへと流されてしまったのである。猛犬たちに発見されないよう気を配りながら、島を脱出する手立てを探るエリックたち。しかし幾ら歩いても、島には生きた犬の姿は見当たらず、ただ犬の死骸と白骨が転がっているだけだった。老婆が暮らしているという屋敷に入ってみても、既に老婆はミイラと化している。この島が猛犬のひしめく危険地帯というのは、既に過去の話なのだろうか。エリックは怪訝に思いながら、屋敷の地下倉庫の扉を開けてみた。するとそこには、ニックとドナの無惨に変わり果てた惨殺体が。更に近くの沼地には、バートの溺死体が浮かんでいた。確かにドッグ・アイランドを支配していた老婆は死に、猛犬たちも死に絶えた。だがこの島にはまだ、老婆の息子である奇形児ヒューモンガスが生き延びていた。ヒューモンガスは犬のようなうなり声をあげながら、自らのテリトリーに侵入した異分子を1人ずつ殺害していったのである…。
「プロムナイト」「グリズリー・プラネット」のポール・リンチ監督による殺人鬼ホラー映画。本作の最大の特徴は、ヒューモンガスの明確な姿が全編通して一度も確認できない点にある。前半部分では逃げる若者の姿にヒューモンガスのうなり声が被さるだけで、その姿が画面に出てくることは無い。中盤でヒューモンガスとの対決に突入しても、真夜中という舞台設定に加え、執念的なまでの逆光演出やカメラワークによって、シルエットしか分からないようにされていた。そして後半、戦いの舞台が真っ暗な屋敷から一転、燃え盛るボートハウスに移り、ようやく画面が明るくなる。これで遂にヒューモンガスの容貌を確認できるかと思ったら、ヒューモンガスは燃えあがる炎の向こう側で頭をぶんぶん振っているため、またしてもどんな顔なのか判別することができないのだ。そしてクライマックスの対決を終え、いよいよ主人公がヒューモンガスの顔を確認する場面に突入する。ところがこの時点でのヒューモンガスは、先ほどのボートハウスで激しい火傷を負っており、画面いっぱいに映し出された顔はひどく焼損していた。そのため元々こいつがどんな顔をしていたのかは、最後の最後までハッキリとは分からなかったのである。ストーリーは説明不足だし、ヒューモンガスの殺害手口はありふれたものばかりだし、ホラー映画としては凡作もいいところなのだが、一度ヒューモンガスの顔が気になってしまうと、ついつい最後まで画面に引き付けられてしまう作品だった。
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