海底都市              「評価 C」
時は21世紀。アメリカは太平洋に眠る金脈を掘り起こすため、海底都市パシフィカを建設。多くの金を採掘し、経済を潤していた。ところが2053年、地殻変動によりアメリカ東海岸各地で大規模な地震が頻発するようになった。地震学者が調査したところによると、パシフィカで採掘した金と危険なエネルギー物質を保管するフォートノックスが、数日中に地震に見舞われるらしい。そこで大統領は、かつてパシフィカの指導者として辣腕を振るっていたマシューズを海底都市に呼び戻し、フォートノックスの金とエネルギー物質を、すぐさまパシフィカの大金庫に移管するように命じた。早速任務に取り掛かるマシューズだったが、そもそも彼が第一線を退いたのが、彼が原因と思われる事故で同僚が死んだからであったため、かつての仲間たちはマシューズに対して協力的ではなかった。そんな逆境にもめげず、マシューズは任務を終え、金とエネルギー物質は無事パシフィカの大金庫に収められた。しかし悪いことは続くもので、今度は超重量をもつ小惑星が地球に接近していることが判明する。おまけに衝突は数時間後で、落下地点はパシフィカだというから大変だ。急いで海底都市の住民たちを避難させようとするマシューズたち。ところがその頃、海底都市で働いていたマシューズの弟ブレッドは、このドサクサにまぎれて大金庫の金を奪い取ろうと画策していたのだ…。
60年代に幾つものSFテレビシリーズを手がけてきたアーウィン・アレンが、72年の「ポセイドン・アドベンチャー」で大作パニック路線に転換する前の、節目の時期に製作したSF活劇。さすが多くの名作ドラマを生み出しただけのことはあり、次々生じるイベントをスピーディーに処理して観客を飽きさせない構成は見事の一言。作中に出てくる未来を感じさせる諸要素、原色のカラフルなボディスーツを着た女性たち、海底都市に並ぶキノコ状のビルディング、銅線と電球で人間の形を象ったロボット、といったものが、1970年という製作年度を考えても十分に古臭いセンスだったりするのも、レトロ・フューチャー感バリバリで楽しめるし、何よりアーウィン・アレンがこの作品を機に未来世界に対して見切りをつけたと考えると、非常に興味深く感じられた。ただしこの映画、スピード重視な脚本のため、地震や火山噴火といった災害描写はアッサリとした演出で済まされており、パニック映画好きとしては物足りなく感じられた。これはクライマックスにおいても同様で、小惑星の軌道を逸らすためミサイルを撃ち込む作戦よりも、金塊泥棒との対決の方に比重が置かれており、作中で繰り広げられている災害のスケールに反し、スペクタクルな雰囲気は微塵も感じ取れなかったのである。いくら「ポセイドン・アドベンチャー」の2年前の作品とは言え、本作にパニック映画としての要素を求めると失望することだろう。
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